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2015年7月31日 金曜日
民法相続編その24・・・遺言⑦
民法相続編その24は、遺言の⑦で遺留分について取り上げます。
1、 法律により保障される遺留分
遺留分とは、一定の相続人に最低限確保されている相続分のことを言います。被相続人が相続人以外の者に対して贈与や遺贈をした場合でも、侵すことができないものです。
人は自分の財産を自由に処分することができます。これは生前に限らず遺言すれば死後の処分にも及びます。しかし遺言者の意思であっても、遺言者の死後に残された近親者の生活のことも考慮する必要があります。そこで遺留分の制度が認められるようになったのです。
2、 遺留分の権利者
遺留分の権利を持つ者は、相続人のうちでも、配偶者、直系卑属、直系尊属に限られています。兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
また、相続廃除や相続欠格、相続放棄によって相続権を失った者には遺留分はありません。
3、 遺留分の割合
遺留分の割合は、権利者の組み合わせによって次のように変わってきます。
① 直系尊属のみが相続人のときは、相続財産の3分の1
② その他のときは、相続財産の2分の1
遺留分を算定する際の基礎となる相続財産とは、被相続人が死亡した際に持っていた財産の価額に、相続開始前の1年以内に行った贈与などの財産の額を加算して、その額から債務の額を控除して決定します。したがって、相続分を算定する際の相続財産とは異なります。
4、 遺留分減殺請求
遺留分の権利者は、被相続人から得た相続財産の額が遺留分に達しない場合には、遺留分が侵害されたとして、多く相続した者や遺贈・贈与を受けた者に対し減殺請求ができます。
しかし、遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合でも、その贈与や遺贈が無効になるわけではありません。また、遺言により遺贈の減殺の順序や減殺の割合を変えることができます。
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|2015年7月24日 金曜日
民法相続編 その23・・・遺言⑥
民法相続編その23は、遺言の⑥で遺言の撤回方法と遺言執行者について取り上げます。
4、遺言の撤回の方法
遺言撤回の方法とは、前の遺言と矛盾する内容のものを新たに作成すればよいのです。この場合撤回という文言を使用する必要はありません。何らかの形で前の遺言の効力を否定する表現をするだけで十分でしょう。
同じく遺言者が前に記した遺言とは矛盾するような行為をした場合も、遺言の矛盾する部分については撤回されたものとみなされます。たとえば、「ある建物をAに残すという遺言をしておきながら、遺言者が生前にその建物を売却した」などはこれに当たります。
遺言者が遺言をいったん撤回した後、次の遺言でこの撤回を再度撤回した場合遺言者の真意が明らかでないので、最初の遺言は復活しないこととされています。
5、遺言執行者と遺言執行
遺言を作成しても、相続が発生した後にその遺言の内容を実現させなければなりません。不動産の相続登記や預貯金の名義書換といった遺言の内容を実行する実務を行う権限を持つ者を遺言執行者といい、遺言で指定することができます。公正証書遺言の場合は、公証人が介在するため遺言執行者を定めないケースはほとんどないと思われますが、自筆証書遺言の場合は、記載がないことがよくあるので注意が必要です。
遺言執行者の指定がなされてなかったり、指定者が遺言執行者への就任を拒絶した場合等は、相続人・受遺者等の請求することにより家庭裁判所が選任します。
遺言執行者には、相続人や受遺者がなることも可能ですが未成年者と破産者は遺言執行者になることができません。また、遺言をめぐって争いが生じた場合、遺言執行者が相続人の間に入る事態も考えられます。相続争いが想定されるような場合には、報酬の問題がありますが専門家を遺言執行者として指定するほうがよいでしょう。遺言執行報酬は、相続財産の中から支払われるので、遺言で定めておくのが望ましいでしょう。
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|2015年7月17日 金曜日
民法相続編 その22・・・遺言⑤
民法相続編その22は、遺言の効力を取り上げます。
1、 遺言の効力
遺言は遺言書の作成が適法であれば、作成時に成立したことになります。ただし、効力が発生するのは、遺言者が死亡したときにとなります。
また、遺言に停止条件が付けてあるときは、条件が成就して初めて効力が生じます。同じように遺言の記載内容を実現するために特別な手続きが必要な場合も、手続き完了までは確定的な効力は生じません。
たとえば、遺言に推定相続人の廃除が記載されていたとします。この場合は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をし、裁判所の審判で廃除が確定して初めて、遺言は遺言者の死亡時にさかのぼって効力を生じることになります。
2、 無効になる場合
遺言も法律行為である以上、民法総則に定める意思表示の規定の適用が問題となります。これらの規定は、遺言の性質に適合する限り適用されます。
遺言に関しては、作成の方式が定められておりこれに違反した遺言は無効となります。15歳未満の遺言、意思無能力者の遺言も無効です。また、犯罪行為を唆すなどのような公序良俗に反する遺言も無効になります。
同じく、錯誤により作られた遺言も無効ですし、詐欺や強迫による遺言や取り消すことができます。
3、 遺言の撤回
有効に作成された遺言を効力が発生する前に阻止することを、遺言の撤回といいます。遺言の効力が生じる前ならば、撤回は自由にできます。
普通の人は、遺言をいったん作成しても気が変わることがあります。撤回を認めないとすると「遺言は遺言者の最後の意思表示」という遺言本来の意味が崩れてしまいます。遺言は遺言者の最終的な意思を尊重するための制度なのですから、撤回できるのは当然のことです。
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|2015年7月10日 金曜日
民法相続編その21・・・遺言④
民法相続編その21は、遺言の④で公正証書・秘密証書を取り上げます。
3、 公正証書遺言
公正証書遺言は、公正証書によって遺言を作成する方法です。証人2人以上の立ち合いをつけ、遺言者は遺言の内容を公証人に口述します。公証人はこれを筆記し、のちに遺言者と証人に読み聞かせ、または閲覧させます。ついで、遺言者と証人、公証人が署名押印して完成します。
なお、言語機能に障害がある人は手話通訳や筆談による方法が認められます。また、病床にある場合、公証人に出張を依頼することができます。ただし、認知症等で意思能力に問題がある場合には、医師の診断書等が必要です。
この方式の特徴は、遺言の原本が公証人役場に保管され、偽造、破棄、隠匿の恐れがないことです。また、遺言者の意思に基づき向こうの主張の恐れが少ないこともあります。家庭裁判所の検認手続きが不要で、遺言検索システムによる検索が容易であるというメリットもあります。
しかし遺言内容を他人に知られるという欠点があり、公証人への手数料も発生します。
4、 秘密証書遺言
秘密証書遺言の作成方法は、まず遺言者は遺言内容を記載した証書に署名・押印します。次いで、証書を封じ証書に押印した印鑑でこれを封印します。そして公証人1人と証人2人以上の前にこの封書を提出し、自分の遺言書である旨と遺言書が他人によって書かれているときは筆記者の氏名、住所を申述します。公証人は、証書が提出された日付および遺言者の申述を封紙に記載し、遺言者、証人とともに署名押印し成立となります。
ここでの申述も、手話通訳でできます。遺言内容を記した証書は、他人の筆記でもワープロで作成してもかまいません。
この方式のメリットは、遺言書の内容を秘密にすることができることと公証人の手数料が節約できます。一方で、公証人が遺言の内容を確認することができないため、内容に不備があったり紛争の種になったりする可能性があります。また、家庭裁判所の検認が必要です。
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|2015年7月3日 金曜日
民法相続編その20・・・遺言③
民法相続編その20は、遺言の③で遺言の方式について取り上げます。
1、 遺言の方式
遺言の方式には、普通方式と特別方式の2種類があります。
特別方式の遺言とは、臨終、船舶の遭難、伝染隔離など危急の状況時に作成されるものです。つまり、普通方式の遺言が不可能なときのものですから普通方式によって遺言することができるようになった時から6か月生存するときは特別方式によった遺言は効力を失
います。
普通方式の遺言の場合も、民法の定める方式に従って作成しなければ無効となります。たとえば、「夫婦だから1通の遺言書で」などは共同遺言となり無効となります。この普通方式の遺言には、次の三つの作成方法があります。
① 自筆証書遺言
② 公正証書遺言
③ 秘密証書遺言
2、 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者がその全文を自筆し、日付、氏名も自筆であることが要求されます。そしてこれに印鑑を押さなければなりません。したがって、遺言者の口述した内容を他人が筆記したり、ワープロや録音テープで作成したりした場合は自筆証書遺言とは認められません。
また日付は暦日を記載するのが通常ですが、「第何回目の誕生日」のように作成日が特定できるのであれば有効となります。印鑑は認印で構いませんし母音でも認められます。
公正証書以外の遺言は、相続の開始後に家庭裁判所に提出して検認を受ける必要があります。
自筆証書遺言は、費用も手間もかからず簡単にできます。しかし紛失や隠匿の恐れがあり、方式を間違えたりして無効になる恐れがあります。したがって自筆証書遺言は、争いが起きない場合に限ります。そうでなければ、あくまで公正証書遺言を作るまでの暫定的なものと考えるべきです。
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