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事業承継

2020年9月25日 金曜日

【時事解説】第三者承継支援総合パッケージについて その2

記事提供者:(株)日本ビジネスプラン

 では、第三者承継支援総合パッケージはどのような内容となっているのでしょうか。そこで同パッケージの概要についてみていきましょう。

 第三者承継支援総合パッケージでは1年間で6万者、10年間で60万者の第三者承継の実現を目指しています。同パッケージは、①経営者の売却を促すためのルール整備や官民連携の取組、②マッチング時のボトルネック除去や登録事業者数の抜本増加、③マッチング後の各種コスト軽減の三つの柱から成り立っています。

 一つ目の柱である経営者の売却を促すためのルール整備や官民連携の取組においては、「事業引継ぎガイドライン」を改訂し経営者が適正な仲介業者・手数料水準を見極めるための指針を整備することで第三者承継を経営者の身近な選択肢とすることや、事業引継ぎ支援センターの無料相談体制を抜本強化し、経営者が気軽に相談できる第三者承継の駆け込み寺とすることなどが主な施策として掲げられています。

 二つ目の柱であるマッチング時のボトルネック除去や登録事業者数の抜本増加においては、「経営者保証ガイドライン」の特則策定により個人保証の二重取りを原則禁止とすることや、「事業引継ぎ支援データベース」を民間事業者にも開放し、スマホのアプリを活用したマッチングなど簡便なしくみを提供することなどが主な施策として掲げられています。

 三つ目の柱であるマッチング後の各種コスト軽減については、新社長就任に向けた後継者の教育支援や、事業の選択と集中を促す補助金の創設をはじめ、予算・税・金融支援を充実させることが掲げられています。

 以上の取組を通して、親族外の第三者による承継を後押しすることが期待されているのです。(了)

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2020年9月18日 金曜日

【時事解説】第三者承継支援総合パッケージについて その1

記事提供者:(株)日本ビジネスプラン

 経済産業省は、後継者不在の中小企業に対して、第三者による事業承継を総合的に支援するため、2019年12月に「第三者承継支援総合パッケージ」を策定しました。
 これは、後継者未定の中小企業について、これまでの対策では不十分な点があったため、黒字廃業の可能性のある中小企業の技術・雇用等の経営資源を次世代の意欲ある経営者に承継・集約することを目的に取りまとめられたものです。
 とくに親族外の第三者による承継を推進するうえで、中小企業のM&Aの件数が、潜在的な後継者不在の中小企業の数と比較して不十分となっており、その背景として以下の3点があげられます。

 一つ目の課題として、マッチング前の段階において、中小M&A市場の売り手と買い手の割合が1対9程度となっているなど売り案件が圧倒的に少数である点があげられます。経営者にとって第三者承継が身近でなく、他者へ「売る」ことへの抵抗感が根強いことや、仲介手数料や仲介業者などのM&Aに関する情報が不十分なため、売りを躊躇することが要因として考えられます。

 二つ目の課題として、マッチング時の段階において、事業引継ぎ支援センターの成約率が約8%にとどまっているなどマッチングの成立が困難な点があげられます。個人保証の存在により承継を拒否したり、従業員も含め適切な相手が見つからなかったりすることが要因として考えられます。

 三つ目の課題として、マッチング後の段階において、承継後の経営統合が困難な点があげられます。承継後の経営統合や事業戦略の再構築にコストを要することを懸念して、承継を躊躇することが要因としてあげられます。

 これらの課題に対処するため、第三者承継支援総合パッケージでは政策の抜本強化が図られているのです。(つづく)

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2019年11月22日 金曜日

【時事解説】小規模企業における事業承継の現状と課題 その2

記事提供者:(株)日本ビジネスプラン

 では、小規模企業における事業承継問題の解決にあたっては、具体的にどのような支援が行われているのでしょうか。そこで、中小企業庁編『小規模企業白書2019年版』において、小規模事業者の後継者のマッチング支援を行う自治体の事例として取り上げられた滋賀県東近江市の取り組みについてみていきましょう。

 滋賀県東近江市は、同県の廃業率が他県と比較して高いこと、後継者不在のために黒字状態で廃業する事業者がいることに問題意識を持ち、中小企業・小規模事業者の後継者候補探しを支援する取り組みとして「まるごと東近江あとつぎさん募集事業」を実施しました。

 同市では、2018年1月に、同市の魅力をPRすることを目的に、市内の商工会・商工会議所、工業会、観光協会、JAなどを構成団体として、「まるごと東近江実行委員会」を立ち上げました。そこで、特に商工会・商工会議所から、同市の魅力を伝えることで、事業承継を支援することにつながる事業ができないかとの提案があり、同事業が進められました。

 同事業の取り組みとして、2018年11月には東京駅近郊で「事業承継個別相談会」を実施しました。この相談会は、同市内の黒字だが後継者がいない事業者と、首都圏の様々なスキルを持った人材を後継者候補としてマッチングさせることを狙いとして行われました。地道な広報活動が奏功し、各事業者はおおむね10~30件程度の相談者と面談することができました。相談会後の事業承継に関するやり取りは、商工会・商工会議所が支援しながら進めています。

 このように、小規模企業の事業承継支援にあたっては、行政機関、商工会・商工会議所などといった様々な支援機関が連携して取り組むことが重要となるのです。(了)

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2019年11月15日 金曜日

【時事解説】小規模企業における事業承継の現状と課題 その1

記事提供者:(株)日本ビジネスプラン

 わが国の企業数減少に至る主な問題・事例として、2016年現在で企業数全体の84.9%を占める小規模企業が減少していることがあげられます。企業数減少の主な要因として、後継者不在を理由に廃業せざるをえない企業の存在があること等から、小規模企業における事業承継問題の解決が喫緊の課題となっています。

 中小企業庁編『小規模企業白書2019年版』では、小規模企業における事業承継の実態や課題を「事業承継した個人事業主」と「事業承継した小規模法人の経営者」に区分して分析しています。
 同白書において、中小企業・小規模事業者の経営者を引退した者を対象に実施したアンケート調査によると、引退した経営者と事業を引き継いだ後継者の関係においては、個人事業主では親族内承継が86.4%を占めており、その大半は子供(男性)への承継となっています。他方、小規模法人では親族内承継が60.3%を占める一方で、親族外の承継も3割を超えています。

 事業承継した経営者が引退に向けて懸案事項などを相談した「外部の専門機関・専門家」についてみると、個人事業主、小規模法人ともに事業承継に係る手続きを行ううえで接点の多い「公認会計士・税理士」を相談相手とする割合が最も高くなっています。次に、個人事業主においては「商工会議所・商工会」、小規模法人においては「取引先金融機関」の割合が高くなっており、小規模な個人事業者及び法人にとって、地元の商工会議所や商工会、金融機関が事業承継の相談窓口として機能していることが示されています。

 このように、小規模企業の経営者が事業承継の課題を解決するためには、様々な専門機関・専門家と連携して経営者引退の準備をすることが重要となるのです。(つづく)

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2018年9月28日 金曜日

【時事解説】事業承継の選択肢としてのM&A

記事提供者:(株)日本ビジネスプラン

 中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、親族内・従業員承継で後継経営者が見つからない場合などの選択肢として「社外への引継ぎ」をあげており、引継ぎ先を選定するためのマッチングが合意に至ればM&A等の実行を検討する旨が記載されています。こうした背景から、経営資源を次世代に引き継いでいく選択肢の一つとして、中小企業のM&Aへの関心が高まっています。

 2018年版中小企業白書に基づいて中小企業におけるM&Aの実態についてみると、中小企業において実際にM&Aを実施したことのある企業の割合は11.6%と現状はそれほど多くはないものの、直近のM&A実施時期については「2015年以降」と回答した割合が44%を占めており、足もとでM&Aが盛んになっていることがうかがえます。

 買い手企業側のM&Aの実施目的をみると、「売上・市場シェアの拡大」が最も多く、次いで「事業エリアの拡大」となっており、付加価値向上を企図してM&Aを行う企業が多いことがうかがえます。

 一方でM&Aをした相手先(売り手企業側)の経営者年齢についてみると、「60歳代」と「70歳代以上」と合わせた割合が約7割を占めています。また、相手先の経営者年齢別に相手先のM&Aの目的をみると、相手先経営者の年齢が「60歳代」や「70歳代以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高くなっています。このことから経営者が高齢となり後継者不在の企業においてはM&Aが活用されていることがうかがえます。

 このように中小企業のM&Aでは、売り手企業側が事業承継を目的としている一方で、買い手企業の多くは事業拡大を目指しており、これらを結び付けていくことがカギとなるのです。

では、中小企業では事業承継を契機としたM&Aの取組みが具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで2018年版中小企業白書で紹介され後継者不足に悩む小規模な調剤薬局の受け皿となっている株式会社大信薬局(本社:福岡県北九州市、従業員330名)の取組みについてみていきましょう。

 株式会社大信薬局は、北九州を中心に調剤薬局やドラッグストアを運営する企業です。現社長が経営を引き継いで以降、様々な経営改革を進める中で、成長に向けた施策として特に小規模な調剤薬局のM&Aに特化しつつ店舗数を拡大させてきました。

 売り手の多くは、医薬分業が進んだ約30年前に独立した薬剤師であり、現在は60歳前後になり事業承継を考える方が多いことから、現社長はそういった調剤薬局のオーナーやその関係者を訪問し、譲渡先の候補の一つとして先方に認識してもらえるように話をしてきました。その結果、地道に構築してきた人脈から紹介を受けるケースに次いで、オーナーから直接問い合わせを受けるケースが多くなっています。M&A後は、地域や市民に根付いた従来の店舗運営を基本としつつも、仕入れや間接部門の効率化を図り、生産性を向上させています。

 最近では、店舗で働く薬剤師の人手不足が深刻化しており薬剤師を自力で確保できず、M&Aを考えるオーナーもおり同社の人材供給力への期待が高まっていることから、同社では福岡県内の大学を中心に、薬剤師のインターンや新卒採用を強化しています。

 このように小規模事業者においてもM&Aが後継者問題解決の一つの選択肢として活用されているのです。

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