事業承継
2018年5月25日 金曜日
【時事解説】後継者人材バンクを活用した事業承継支援
記事提供者:(株)日本ビジネスプラン
わが国の企業数は減少傾向にあり、とくに小規模企業の減少が顕著となっています。
小規模企業の廃業の主な要因の一つに、事業を継続させたい意向があるにもかかわらず、後継者不在を理由に廃業せざるをえない企業の存在があげられます。
中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、小規模企業に対して創業希望者と後継者不在の小規模企業とをマッチングさせるといった「創業との連携」の重要性が指摘されています。
こうした中、国は2011年度から後継者不在に悩む中小企業に対して、第三者への承継(引継ぎ)を支援するため、各都道府県に事業引継ぎ支援センターを設置し支援を行っています。そして一部の事業引継ぎ支援センターにおいて、2014年度から後継者人材バンク事業を開始しています。後継者人材バンクとは後継者不在の小規模事業者(主として個人事業主)と創業を志す個人起業家をマッチングする事業であり、個人事業主の後継者問題の解決と創業の促進を同時に図ることを狙いとしています。
後継者人材バンクのメリットとして、起業家にとっては顧客や販売先、仕入先、店舗等の経営資源や、地域における知名度、経営ノウハウ等の無形資産を引き継ぐため起業に伴うリスクを低く抑えることができます。また、後継者不在の事業者にとっては、後継者問題を解消し事業の継続を図ることで、従業員の雇用や取引先との取引を継続することができます。
一方で、起業家にとってはゼロからの起業と比較すると相対的に経営の自由度が低くなるとともに、現経営者と経営方針のすり合わせを行う必要がある点に留意する必要があります。
では、後継者人材バンクでは具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。
そこで長野県事業引継ぎ支援センターで運営されている「長野県後継者バンク」を活用した事業承継の事例として、長野県中小企業振興センター「中小企業経営支援事例集」でも紹介されているペンションオードヴィー(所在地:長野県山ノ内町、従業員数2名)の事例をみていきましょう。
長野県後継者バンクでは、譲渡希望者の事業としてペンション等の宿泊事業者が多いこと、これらの事業の譲受希望者の中には都市部から脱サラしてくる人が多いことを受けて、長野県中小企業振興センター内に設置される創業サポートオフィスや商工会議所・商工会以外に、東京・大阪・名古屋に設置されている移住交流センターにも相談窓口を設けています。
ペンションオードヴィーは、奥志賀高原において1998年に開業して以降、安定した経営を続けてきました。しかし、後継者がいないこともあって代表者が気力・体力の衰えを感じるようになる中、引き継いでくれる人を探すために同バンクに譲渡希望者として登録するに至りました。
その後、ペンション経営を若い頃からの夢とし準備を進めてきた横浜市在住の会社員が長野県後継者バンクに譲受希望者として登録したのを契機に、事前調査を経て両者の引き合わせが行われました。譲渡希望者の経営方針・姿勢が譲受希望者と合致したことから、口頭による基本合意を経て、その後無事に事業の引継ぎに至りました。
このように後継者人材バンクによる事業承継にあたっては、譲渡・譲受希望者の双方の間で経営理念や想いが共有されることが重要となるのです。
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