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2015年6月9日 火曜日
民法相続編その17・・・相続人不存在の場合②
民法相続編その17は、相続人不存在の場合の②です。
「①の続きから」
公告期間内に相続人が現れなかった場合や、現れても相続を承認しなかった場合には、相続人の権利はすべて消滅することになります。また、権利を主張しなかった債権者や受遺者の権利も同様に消滅します。すべての清算が終了した後も財産が残っている場合は、原則として国庫に帰属することになりますが、一定の条件を満たす者が家庭裁判所に申し立てると、この者に財産の全部または一部が帰属します。
(3) 特別縁故者への財産分与(民958条の3)
被相続人に相続人がいなかった場合で、被相続人と生活を共にしていた者、療養看護に努めた者は、特別縁故者として被相続人の財産分与を受けることができます。つまり内縁の配偶者や同居の親族など被相続人と密接な関係にあった者は、相続財産の全部または一部を受けることができるのです。
この請求は、相続人の捜索の公告の期間の満了後3か月以内に家庭裁判所にする必要があります。
特別縁故者に分与された財産に対しては、遺贈によって財産を取得したのと同じ課税関係が生じます。分与を受けたのが個人の場合には相続税が課税され、法人の場合には法人税が課税されます。基礎控除等相続税の適用については相続開始時の相続税法が適用されますが、分与の効果は、審判の確定によって生じるため財産の評価は審判確定時の時価によります。特別縁故者は2割加算の対象となり、審判確定の日の翌日から10か月以内が相続税の申告期限となります。
(4) 相続人が判明した場合
相続人捜索期間が終了するまでに相続人が現れた時は、相続財産管理や清算手続きは 直ちに廃止されます。また、相続財産法人は初めから存在しなかったものとみなされます。
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|2015年6月5日 金曜日
民法相続編その16・・・相続人不存在の場合①
民法相続編その16は、相続人不存在の場合の①です。
「相続人不存在の場合」
(1) 相続財産の管理(民951条)
相続が発生し、その相続人がいるかどうかわからないときには、民法では相続財産を法人にしています。この法人は利害関係人または検察官が請求し、家庭裁判所により相続財産管理人が選任され公告されます。この場合の利害関係人とは、被相続人の債権者や特定受遺者、徴税のための国などを言います。
相続財産管理人は相続財産の目録を調整したり、相続財産の維持、保存に必要な行為を行います。また相続財産管理人は、被相続人の債権者や特定受遺者の請求があったときは、相続財産の状況を報告する義務があります。それらの費用は相続財産の中から支出されます。
包括受遺者がいない場合、相続財産管理人が準確定申告を行うことになるようです。しかし、債務の弁済のために相続財産を売却した場合譲渡所得の申告義務があるのかどうか疑問が残ります。いずれ国庫に帰属するのだから納税義務はないとも考えられます。
(2) 相続人の捜索手順と期間(民957条,958条)
相続財産管理人は、選任されてからの2か月間は財産の保持に努め相続人の出現を待ちます。そしてこの期間内に相続人が現れない場合、管理人は被相続人の債権者や特定受遺者に対して2か月を下らない期間を定めて「債権を申し出るように」との公告をします。この期間が満了したら清算が開始され弁済がなされます。
そしてこの期間が経過してもなお相続人が現れなければ、家庭裁判所は「相続人は名乗りでなさい」との公告をします。この公告は、管理人か検察官の請求によって行い、期間は6か月をくだらない期間となっています。
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|2015年5月29日 金曜日
民法相続編その15・・・承認及び放棄②
民法相続編その15は、承認及び放棄の②として限定承認の制度を取り上げます。
3、限定承認(民922条)
相続財産を調査しても、財産と債務のどちらが多いか判断がつかない場合があります。このような場合に限定承認という方法があります。限定承認とは、相続によって得た財産を限度として債務を負担することを言います。つまり残された債務が財産を上回るときでも相続した財産の範囲で支払えばよく、上回る部分は支払う必要がないのです。これは、被相続人の相続財産と相続人固有の財産を区別して清算する方法です。
限定承認する場合も相続放棄と同様、相続が開始したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。その際には財産目録を調整して提出する必要があります。相続人が複数存在する場合の限定承認は、法律関係が複雑になることを避けるために、共同相続人全員が共同して行わなければなりません。
実務上は、共同相続人中一人を残して相続放棄をし、残った一人が限定承認をする方法が簡便です。
限定承認は、手続きが煩雑と考えられ敬遠されがちですが、下記のような場合にも検討に値すると思われ専門家に相談すべきです。
1、財産のほうが多いと思われるが、相続人の知らない債務の存在が疑われる場合、存在は明らかでも金額が確定していない債務がある場合など
2、不動産と借金があるが、不動産の売却をして借金を返済をせざるを得ない場合
3、借金のほうが多いと思われるが、財産の価額や不明な資産がある場合
限定承認をした場合、注意すべき点として譲渡所得が課税されることです。資産を売却して返済するにあたって譲渡所得に対する税を支払わなければならないのは致し方ありません。しかし、売却しないで残った財産についても時価で譲渡されたものとみなして所得税が課税されます。被相続人の存命中の値上がり益について清算し、譲渡所得に対する税も含めて相続財産の範囲で支払えばよいとされていますが、相続財産の一部でも売却せずに債務の弁済が可能な場合には、限定承認は損な選択となってしまいます。
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|2015年5月22日 金曜日
民法相続編その14・・・承認・放棄等①
民法相続編その14は、承認及び放棄を取り上げます。
「相続の承認と放棄」
1、単純承認と放棄等
相続財産の中には、被相続人の借金や保証人としての地位など相続してもありがたくないものも含まれます。資産の方が多ければよいのですが、借金のほうが多い場合や不明の場合には、一定の手続きを取らなければ借金の相続を認めたことになってしまいます。単純承認といいますが、何もしなければ財産および借金すべてを相続します。
民法915条では、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない。」と規定しています。
また、この熟慮期間は利害関係人の請求により3か月伸長することができます。状況により再延長も認められます。
また、熟慮期間の起算日については、通常は被相続人が死亡したことを知った日ですが、相続人が相続財産(債務)の全部または一部の存在を認識したとき等とするのが相当であるとする判例があります。
2、相続の放棄
財産も一切相続しない代わりに債務も一切相続しない方法が、相続の放棄です。相続人は相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述することにより相続を放棄することができます。相続放棄の申述を受けた家庭裁判所は、その申述が本人の意思によるものかどうかを確認したうえで受理の審判をします。
相続の放棄は、限定承認と異なり共同相続人がいる場合でも個々の相続人が単独で行うことができます。相続放棄した者は、初めから相続人でなかったものとされます。したがって相続分の算定に当たっては、相続放棄者は初めから除外することになります。
また、相続放棄は自分への相続が発生した後でなければ行うことができず、相続開始前に申述しようとしても認められません。
借金が多く相続を放棄する場合には、当然ですが法定相続人の全員が放棄する必要があるので注意が必要です。
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|2015年5月15日 金曜日
民法相続編その13・・・遺産分割②
民法相続編その13は、遺産分割の2回目です。
(3)遺産分割には債務も含まれる
相続財産に債務が含まれている場合は注意が必要です。もし法定相続分と異なる分割協議が成立しても、債務については法定相続分の割合に従って相続されたものとして認定されるからです。したがって債権者からも請求されることになります。これを防ぐためには債務も分割協議の対象とするとともにあらかじめ債権者の承諾を得る必要があります。
(4)特殊な遺産分割の方法
相続財産が不動産のように分割が容易でない場合、代償分割・換価分割という遺産分割の方法があります。代償分割は、特定の相続人が不動産を取得する代わりに代償として他の相続人に金銭を支払って調整する方法です。代償金の金額をいくらとするのか、相続人に支払い能力があるのかが問題となります。換価分割は、相続した不動産を売却し売却代金を分割する方法です。遺産を手放さなければならないことと、不動産の売却による譲渡所得が発生するという問題が生じます。
その他に、相続分の譲渡という遺産分割と同様の効果を得られる方法があります。相続人同士の譲渡と相続人以外の第三者への譲渡がありますが、第三者へ譲渡した場合その者が相続人と同様の権利を得ますので現実的ではありません。有償でも無償でも構わないので遺産分割でもめている場合に活用できます。
(5)遺産分割不成立の場合
遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。共同相続人のうち1人でも反対者がいるときは、家庭裁判所の調停制度を利用することが考えられます。この調停では、裁判所の調停委員が当事者のそれぞれの言い分を聞いて、共同相続人の全員が納得できる方法を探ることになります。
調停が成立すると、調停調書が作成されます。この調書に記載された内容は確定した審判と同じ効力を持ちます。この調書によって不動産の相続登記などを行うこともできます。
調停を行っても合意できない場合には、次は審判の手続きをとることになります。審判は話し合いではなく、裁判官が決定を下すことになります。
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