財産評価
2018年10月1日 月曜日
相続税財産評価Q&A95 非上場株⑨
相続税財産評価 非上場株⑨
Q95
①直前期末から課税時期までの間に転換社債の転換があった場合、社債(負債の部)から株式(資本の部)へ組み変わるため,財産内容に変動がありますが、1株当たりの配当や利益や純資産(比準要素)の内容に調整を加えてもよいですか。
また,次の場合はどうですか。
②増資
③減資
④組織変更
A95
①転換社債の転換があった場合
転換社債は,一定の条件のもとに自由に株式に転換する権利が付与された社債で,株式への転換があるまでは一般の社債(負債)となんら変わりません。ご質問の転換社債も,直前期末時点では単なる社債に過ぎないため,発行済株式数や純資産価額に変化があったとすることはできません。
類似業種比準価額の計算は,直前期末の決算数値に基づいて行います(評基通180)。直前期末の決算も,未転換の社債は負債に計上しているはずですから,そのままの数値で類似業種比準価額の計算に用いることができます。したがって,直前期末の決算数値による比準要素に調整を加える必要はありません。しかし,類似業種比準価額は直前期末を基準としているため,増資前の旧株1株当たりの価格として算出されますので,課税時期までの間に増資(転換)が行われたときは,発行済株式数も増加していますので,増資後(権利落ち)の価格に修正する必要があります(評基通184)。
なお,未転換の社債は負債として扱われますが,潜在的には株式の性格を持つため,修正株価(全部転換を仮定した株価)が転換価格を上回る時は,修正株価をもとに未転換社債を評価することとしています(評基通197-5(3))。したがってこの場合,株式の評価も未転換社債の評価に連動して,未転換社債が全部転換したと仮定した株価(修正株価)に修正する必要がありますので注意してください。
②増資があった場合
転換社債の転換による増資の場合と同様です(評基通184)。
③減資があった場合
増資の場合と同様に比準要素の調整は必要なく,株価の修正が必要になります。
株式の評価は1株当たりの価格として算定されますから,減資については発行済株式数の減少という側面から,実質的減資と形式的減資に分けて考えます。
(実質的減資)有償による減資は,出資の払戻しと株式数の減少が伴いますので,類似業種比準価額の修正は不要です。
(形式的減資)無償による株式の消却や併合は,株主の持分には変化がないまま,株式数だけが減少しますので,下記のように計算されます。
減資前の類似業種比準価額の株価÷減資後の発行済み株式数=減資後の株価
④組織変更があった場合
組織変更は法形式上,解散と設立の経過をたどりますが,法人格の同一性を保持したまま他の種類の会社に変更するに過ぎないため,法人税法上も事業年度は区分されず継続することとしています(法基通1-2-2)。
したがって,仮に直前期中に組織変更があったとしても,比準要素の調整は不要です。
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