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2015年5月8日 金曜日
民法相続編その12・・・遺産分割①
民法相続編その12は、遺産分割の①について触れていきます。
「遺産分割」
(1)遺産の分割
相続人が1人だけの場合、相続財産はすべてその相続人のものになるのですから問題はありません。しかし相続人が複数存在する場合には、相続が開始した時の相続財産は相続人全員で共有する状態になります(民898条)。この状態では、共同相続人は勝手に相続財産を処分したりすることはできず、非常に不便な状態といえます。
その後は、遺言があればそれに従って各相続人の相続分が決まり、遺言がなければ話し合いによって決まることになります。相続分が決まったら、相続人全員の協議により分割方法を決定します。この時に、遺言や法定相続分とは異なった分割で話がつけば、相続人全員の意思として分割協議の結果が優先されることになります。この話し合いのことを遺産分割協議と呼びます。
相続人全員の共有財産である相続財産は、遺産分割することによって初めて相続人固有の財産と同じように取り扱うことができるようになります。
民法906条では、遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれを行うものとしています。ごく当たり前のことを規定しているにすぎませんが、遺産分割で揉めている状況では、相続人がこの一切の事情を無視して法定相続分による相続権を主張するケースがほとんどです。法定相続分のみが独り歩きしているように感じられますが、民法906条の考え方こそ大事にすべきです。
(2)遺産分割協議書
遺産分割協議がまとまったときは、紛争を防止するために遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書は、不動産を相続した場合は相続登記の際に、また、相続税の申告の際にも使用します。そのために実印を使用し、印鑑証明書を各通に添付します。
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|2015年5月1日 金曜日
民法 相続編 その11・・・相続分④
民法 相続編 その11は、相続分④「特別受益と寄与分」についてです。
4、特別受益制度による持ち戻し(民903条)
② 特別受益額の持ち戻し計算
特別受益者がいる場合は、被相続人の相続開始時点の財産の価額に、生前に贈与された財産の価額を加えて、その総額を相続財産として計算し直します。そのうえで、相続人全員で法定相続分に従って配分し直すわけです。この相続分から遺贈または生前贈与の額を差し引いたものが特別受益者の相続分となります。
ただし、特別受益者の相続分を計算したときに、贈与や遺贈の価額がそれを超えることがあっても、特別受益者はその差額分を返還する必要はありません。
③ 適用されない場合
特別受益制度は、相続人全員の公平を図るとともにそれが被相続人の意思に合致すると考えられるために設けられています。したがって被相続人が「生前の贈与や遺贈を相続人に特別に与え、残った財産を共同相続人で分配する」意思を表示していればそれに従うことになります。この場合は特別受益制度の適用はありません。
5、寄与分制度(民904条)
寄与分制度とは、同じく共同相続人の公平を図る制度ですが、特別受益制度とは逆の考え方によります。
例えば被相続人の事業を助け、労務や財産を提供するなど相続人の中に被相続人の財産増加に寄与した者がいる場合、その功績を無視して財産の増加分を単純に相続財産に含めることは不公平になります。このような場合は、その寄与分を相続財産から控除して、寄与者が寄与分の額を相続分とは別に相続することになります。
寄与分の額は、相続人同士の協議で決めますが、決まらない場合は家庭裁判所が決定することになります。しかし、現実にはなかなか認められないのが実態です。
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|2015年4月28日 火曜日
民法相続編 その10・・・相続分③
民法相続編 その10は、相続分の3回目です。
*二重資格の相続人
養子縁組などで、相続人として二重の資格を有する場合があります。たとえば、孫を養子にした後でその親が死亡したため、養子としての身分と死亡した子の代襲相続人として身分と二重の資格が生じます。このような場合、民法上は二重の相続分を有するとして取り扱われます。なお、税務では基礎控除を計算する場合など法定相続人の人数の計算上は、あくまで一人として取り扱います。
4、特別受益と寄与分
法定相続分通りに相続した場合に不公平となる場合があります。たとえば、相続人の一人が相続開始前に被相続人から財産を譲り受けていることがあります。これとは逆に相続人の一人が、被相続人の財産の増加や維持を助けたような場合もあるでしょう。このようなケースに対応するため、民法では特別受益制度と寄与分制度を設けています。
4、 特別受益制度による持ち戻し(民903条)
① 特別受益者
生前の被相続人から婚姻や養子縁組、生計維持のために贈与を受けたり、遺贈を受けたりした相続人もいます。このような相続人がいる場合には、法定相続分に従って相続分を決定すると不公平になります。たとえば、長男だけが事業を始めるために資金援助を受けていたというような場合は、法定相続分に従って配分すると不公平になります。これら特別に利益を受けた者を特別受益者といいます。
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|2015年4月24日 金曜日
民法相続編その9・・・相続分②
民法相続編その9は、相続分の2回目です。
3、 法定相続分(民900条)
④ 父母のいずれか一方が同じ兄弟姉妹の関係
父母の一方だけが同じ兄弟姉妹は、父母の両方が同じ兄弟姉妹の2分の1が法定相続分となります。
⑤ 代襲相続人の相続分(民901条)
代襲相続人の相続分は、被代襲者が受けるはずであった相続分と同じになります。例えば、第1順位で配偶者と子どもが二人で、もともとの相続分は配偶者1/2、子が1/4ずつの場合に、子の一人が先に無くなり孫が代襲者となる場合には、子の相続分の1/4を代襲者が引き継ぐことになります。被代襲者である孫が二人いれば、この相続分1/4を二人で割ることになり、1/8が相続分となります。
*非嫡出子の相続分
従来の民法では、非嫡出子の相続分は、嫡出子の2分の1とされていました。これは、 法律上の婚姻関係を尊重しつつ、非嫡出子の保護の調整を図ったものと解されていました。しかし、2013年9月4日最高裁は、大法廷全員一致の決定として、婚外子の相続差別を定めた民法の規定を違憲としました。今回は、法律婚制度は日本に定着してはいるものの、結婚や家族の在り方、それに対する国民の意識が大きく多様化しており、親を選べない子に不利益を与えることは許されないとしました。
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