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2017年5月19日 金曜日
平成29年度税制改正 資産課税編 その2
平成29年度税制改正「財産評価の適正化」
1、 趣旨
「取引相場のない株式の株価の算出方法の見直し」については、事業承継促進のための税制措置の強化と位置付けられ、上場会社のグローバル連結経営の進展や株価の急激な変動が中小企業の円滑な事業承継を阻害することなく、中小企業等の実力を適切に反映した評価となるよう見直されました。
「株式保有特定会社の判定」は、新株予約権付社債が株価と連動して価額が形成されるのに対し株式保有特定会社の判定に含まれないため節税が可能となっていました。
「広大地評価の見直し」については、現行の広大地の評価は面積に応じて比例的に減額されるため、実際の道路負担に比して大きな減額が可能で節税に利用される事例もあったためです。
2、概要
(1)取引相場のない株式評価の見直し
①類似業種比準方式による株価の算出方法
一、類似業種の上場会社の株価については、2年間の平均金額が選択可能となりました。これは、上場企業の株価上昇局面における急激な変動を平準化する目的です。
二、比準要素である、配当金額、利益金額及び簿価純資産価額に連結決算を反映したものとなりました。上場企業の子会社を含めたグローバル経営を反映し過大な評価を見直すこととしました。
三、比準要素のウエイトを「1:1:1」(現行1:3:1)に改正されました。成長企業や好業績企業の負担を軽減する目的です。
四、会社規模の判定基準について、大会社及び中会社の適用範囲が拡大されました。時価純資産のウェイトが高い中会社の株価を抑える効果があります。
②株式保有特定会社の判定
株式保有特定会社の判定基準に、新株予約権付社債を加えることとなりました。これは、上場株式に代えて新株予約権付社債を非上場会社に出資して、その非上場会社の株式に類似業種比準価額を適用することで株価を圧縮する節税策に対応するためです。
(2)広大地評価の見直し
面積に応じて比例的に減額する現行の評価方法から、各土地の個性に応じて面積・形状(奥行、不整形)等に基づき評価する方法に見直し、適用要件を明確化することとなりました。評価方法の見直しにより実際の取引価額と評価額とのかい離を解消し、また、難解な適用要件の明確化を図るものです。
3、適用時期
この改正は、上記(2)の①は平成29年1月1日以後、(1)の②と(2)は、平成30年1月1日以後に相続等により取得した財産の評価から適用されます。
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|2017年5月15日 月曜日
相続税財産評価Q&A49 貸家建付地①
相続税財産評価 貸家建付地①
Q62
いつの時点から貸家建付地として評価されるのでしょうか?入居募集をかけた時点、借家契約をした時点、入居した時点のいずれでしょうか?
A62
貸家建付地の評価は、自用地としての価額から、自用地の価額に借地権割合と借家権割合を乗じた金額を控除します。
自用地と異なり貸家の場合、借家人の家屋に対する権利が働くとともに、その家屋の敷地についても家屋の賃借権により家屋利用の範囲内において支配権が働くと考えられるからです。しかも、借地権割合が高いほどその権利が強くなり、その分土地の所有者の権利が減殺されることに注目して自用地価額から控除しているものです。
貸家建付地としての評価をするためには、賃借権のあることが必要です。そのため人の入居が条件となり、入居した時からが貸家になると考えられます。
Q63
私は、所有する建物を自分が経営する同族会社に無償で貸しています。この場合貸家建付地として評価することができるのでしょうか?また、有償で社員の社宅として貸し付けた場合はどうでしょうか?
A63
貸家建付地として評価減するためには、家屋に賃借権があることが前提となります。この場合の賃借権とは、借地借家法の適用がある家屋の賃借人の有する賃借権(借家権)をいいます。同族会社に無償で貸している場合には、借地借家法が適用される賃貸借には該当せず、使用貸借による貸付けにあたります。したがって、貸家建付地としての評価は適用できず自用地として評価することになります。
社宅の場合、通常社員の福利厚生施設として設けられています。一般の家屋の賃貸借と異なり賃料が極めて低額に設定されており、その使用関係は従業員の身分を有する期間に限定される特殊な契約関係にあります。そのため、一般には借地借家法の適用はないものと解されています。
したがって、社宅の敷地の用に供されている宅地については貸家建付地としては評価できないものと考えられます。
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|2017年5月12日 金曜日
平成29年度税制改正 資産課税編 その1
平成29年度の税制改正が3月31日に公布、4月1日より施行されています。資産課税の主な改正は三つあり「非上場株式等に係る納税猶予制度の緩和」、「相続税及び贈与税の納税義務者の見直し」、「財産評価の適正化」です。大きな制度改正こそありませんが、項目や適用時期が多岐にわたっています。
「非上場株式等に係る納税猶予制度の緩和」
1、趣旨
事業承継の早期かつ計画的な取り組みを促進する必要から、平成29年度の主な改正は、「要件の緩和」と「生前贈与の促進」の2点になります。
2、内容
(1)「要件の緩和」
①「セーフティネット規定の創設」
「セーフティネット規定の創設」とは、災害などで納税猶予制度の要件を満たさなくなっても、引き続き猶予が継続又は免除されることをいいます。具体的には、下記に掲げる場合に、雇用確保要件の緩和などが行われます。
イ、災害による資産の被害が大きい会社、
ロ、従業員の多くが属する事務所が被災した会社、
ハ、災害や主要取引先の倒産などにより売上高が大幅に減少した一定の会社
②「雇用確保要件の見直し」
人手不足に際し特に従業員の少ない小規模事業者に対する配慮を行い、具体的には、従業員5人未満の企業の従業員が1人減った場合に80%を下回っても(4人⇒3人(75%)・3人⇒2人(67%)・2人⇒1人(50%))、雇用要件を満たすものとされました。
(2)「生前贈与の促進」
①「相続時精算課税制度の併用」
納税猶予の取消時の高額な贈与税負担の不安を軽減することをいい、具体的には、贈与税の納税猶予の適用を受ける株式について、相続時精算課税の適用を可能とすることにより、高額の贈与税を負担せず相続税の負担で済むように改められました。
②「切替要件の見直し」
意欲のある中小企業者の事業承継・成長を支援するため、生前贈与後に贈与者が死亡し、相続税の納税猶予に切替する際の適用要件である中小企業者要件・非上場会社要件を撤廃しました。
(3)その他手続き要件の緩和
制度利用に伴う事務負担を軽減するために、資産管理会社要件の報告の簡素化や提出書類の削減が行われました。
3、適用時期
この改正は、平成29年1月1日以後の相続及び贈与から適用されます。
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|2017年5月8日 月曜日
相続税財産評価Q&A48 地上権他③
相続税財産評価 地上権他③
Q63
私の所有する土地の上には、高圧線の送電線が通っています。この場合宅地の評価は減額されるのでしょうか?また、特に高圧線の権利について登記がされていない場合にはどうなりますか?
A63
相続税財産評価通達では、「区分地上権に準ずる地役権」として評価方法が規定されています。「区分地上権に準ずる地役権」とは、特別高圧架空電線の架設、高圧のガスを通ずる導管の敷設、飛行場の設置、建築物の建築その他の目的のため地下又は空間について上下の範囲を定めて設定された地役権で、建造物の設置を制限するものをいいます。この権利がある土地は、区分地上権の設定された土地と同様、建物の建築が制限されるため価値が下がり評価減の対象となります。具体的には次のとおりです。
区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から次に掲げる「区分地上権に準ずる地役権の価額」を控除した金額によって評価します。
区分地上権に準ずる地役権の価額=宅地の自用地としての価額×区分地上権に準ずる地役権の割合
区分地上権に準ずる地役権の割合は、次に掲げる区分に従い、それぞれ掲げる割合です。
(1) 家屋の建築が全くできない場合・・・100分の50又はその地役権が借地権であるとした場合に適用される借地権割合のいずれか高い割合
(2) 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合 100分の30
また、区分地上権と同様、地役権が1画地の宅地の一部分に設定されているときは、その地役権が設定されている部分の地積に対応する価額となります。
高圧線の設置などが「地役権」として登記されている場合があります。この場合は、土地の全部事項証明書の乙区に記載されているため確認が可能です。また、地役権を設定に伴う権利を登記するために土地が分筆されている場合もあります。この場合には、公図や住宅地図で高圧線価値であることが推測できます。しかし、当事者間での債権契約の場合もあり、この場合は登記されないため内容は契約当事者しかわかりません。契約内容を確認し、建築物の制限内容によって評価しなければなりません。
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|2017年5月1日 月曜日
私道の相続税評価で最高裁が審理差し戻し
私道の相続評価で最高裁が審理差し戻し
記事提供:エヌピー通信社
相続した土地のうち、私道として使われている部分の財産評価をめぐって納税者と自治体が争っていた裁判で、最高裁は自治体側の主張を全面的に認めていた高裁判決を破棄し、さらなる検討を命じる審理差し戻しの判決を下しました。私道と認定されれば税負担は7~10割減となるため、裁判の結果は不動産相続に大きく影響しそうです。
相続財産の評価方法を規定した財産評価基本通達では、私道として利用されている宅地を「私道供用宅地」として、①行き止まりの生活道路など、特定の人間が通行するものについては評価を7割減、②通り抜け道路のように不特定多数の人間が通行するものについては0円――で評価すると定めています。
原告は相続税の申告に当たって、まず②のゼロ評価私道として申告書を提出しましたが、その後①の7割減私道だと修正して申告をし直しました。しかし税務署は「アパートの敷地の一部であり、そもそも私道ではない『貸家建付地』である」として減額特例の適用を認めず、更正処分を決定。不服とした原告が訴えを起こしたものです。
地裁、高裁の判決ではともに自治体側の訴えが認められ、納税者が敗れました。しかし最高裁では、これらの判断を覆しました。私道に当たるかどうかは「建築基準法などの法令の制約の有無だけではない」として、「宅地の位置関係や形状、道路としての利用状況などを踏まえて、総合的に、ほかの用途に転換することが難しいかを考えるべき」との判断を示しました。
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