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2018年10月19日 金曜日
国税庁:2017年度査察白書を公表
国税庁は、2017年度査察白書を公表しました。
それによりますと、査察で摘発した脱税事件は前年度より30件少ない163件、脱税総額は前年度を16.1%下回る約135億円となりました。
2017年度(2018年3月までの1年間)に、全国の国税局が査察に着手した件数は174件となり、前年度を4件下回りました。
また、継続事案を含む163件を処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)し、そのうち69.3%にあたる113件(前年度比19件減)を検察庁に告発しました。
2017年度は、消費税の輸出免税制度を利用した消費税受還付事案(12件告発)や、自己の所得を秘匿し申告を行わない無申告ほ脱事案(21件告発)に積極的に取り組み、過去5年間で最多の告発を行いました。
近年、査察における大型事案は減少傾向にあり、2017年度の脱税総額135億900万円は、ピークである1988年度(714億円)の約19%にまで減少しております。
そして、1件あたり平均の脱税額は8,300万円となり、ここ5年は1億円を下回っております。
告発分の脱税総額は前年度を26億9,100万円下回る100億100万円、1件あたり平均の脱税額は8,900万円(同9,600万円)となりました。
告発分を税目別にみてみますと、法人税が前年度から18件減の61件で全体の54%、脱税総額は約57億円で56%を占めました。
所得税は同8件減の19件(脱税総額約20億円)、相続税は同1件増の3件(同約4億円)、源泉所得税は同2件増の3件(同約3億円)、消費税は同4件増の27件(同約18億円)となり、消費税の脱税額のうち約11億円は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)です。
告発件数の多かった業種・取引をみてみますと、建設業が26件(前年度30件)で最多となり、次いで不動産業が10件(同10件)、人材派遣の5件と続きました。
なお、査察は脱税でも特に大口・悪質なものが強制調査されますが、2017年度の査察は国際事案(15件告発)や太陽光発電関連事案(7件告発)など近年の社会情勢に即した事案に対しても積極的に取り組み、多数の事案を告発しております。
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|2018年10月12日 金曜日
2018年度税制改正:国外財産の相続・贈与の納税義務の範囲を見直し
2017年度税制改正において、国外財産に対する相続・贈与の納税義務の範囲については、国際的租税回避行為の抑制等の観点から、相続人(受贈者)が日本に住所を有せず、日本国籍を有しない場合でも、被相続人(贈与者)が10年以内に日本に住所があったときは、国内・国外双方の財産が相続税・贈与税の課税対象になるように見直されました。
しかし、この見直しに対する強い批判を踏まえ、2018年度税制改正において、再度見直しがされました。
そもそも、改正は課税逃れ防止を目的としたものですが、一方で、高度外国人材の受入れ促進のため、日本国籍を有さずに、一時滞在(国内に住所がある期間が相続開始前15年以内で合計10年以下の滞在)している場合の相続・遺贈の係る相続税は、国内財産のみが課税対象とされました。
しかし、引退後に母国に戻った外国人が死亡した場合にまで、国外財産に日本の相続税を課すのはどうなのかとの声もありました。
そして、2018年度税制改正において、相続開始又は贈与の時において国外に住所を有する日本国籍を有しない者等が、国内に住所を有しないこととなった時前15年以内において、国内に住所を有していた期間の合計が10年を超える被相続人又は贈与者から相続若しくは遺贈又は贈与により取得する国外財産については、相続税又は贈与税を課さないことになりました。
この場合の被相続人又は贈与者は、その期間引き続き日本国籍を有していなかった者であって、その相続開始又は贈与の時において国内に住所を有していないものに限ります。
ただし、その贈与者が、国内に住所を有しないこととなった日から同日以後2年を経過する日までの間に国外財産を贈与した場合において、同日までに再び国内に住所を有することとなったときにおけるその国外財産に係る贈与税については、この限りではないとされます。
なお、この改正は、2018年4月1日以後に相続・遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されますので、該当されます方はご確認ください。
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|2018年10月5日 金曜日
国税不服審判所:裁決事例などを公表
国税不服審判所は、2017年12月分までの裁決事例を、同所ホームページ上に追加公表しております。
それによりますと、公表された裁決事例はのうち裁決の半数近くにおいて、納税者の主張が何らかの形で認められました。
国税通則法関係では、請求人が行った期限後申告書の提出は、調査の内容・進捗状況、それに関する請求人の認識、期限後申告に至る経緯、期限後申告と調査の内容との関連性の事情を総合考慮して判断した結果、国税通則法第66条第5項に規定する「決定があるべきことを予知してされたものでない」ことに該当するとして、所得税等に係る無申告加算税を全部・一部取り消しております。
さらに国税通則法関係において、当初から所得を過少に申告する意図を有していたと認めることはできないとして、重加算税の賦課決定処分を取り消した事例があります。
同事例では、請求人が当初から所得を過少に申告する意図を有していたことを推認させるものとまではいえず、その他、請求人の上記意図を認めるに足りる証拠はないとして、消費税等に係る重加算税の賦課要件を満たさないと判断しました。
そして、法人税法関係では、代表取締役が代表権のない取締役に分掌変更したことに伴って請求人が支給した金員について、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえず、法人税法上の損金算入することができる退職給与に該当しないとした事例があります。
同事例では、当該取締役は分掌変更により、実質的に退職したと同様の事情にあるとはいえないとしたもので、源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を棄却しております。
また、消費税法関係では、請求人が行った商品券の販売は物品切手の譲渡に該当し、非課税取引に該当するとした事例があります。
同事例では、請求人は、発行を受けた商品券の同一性を保持しつつも、顧客へ販売していることから、当該商品券の販売は、消費税法別表第一第4号ハに規定する物品切手に該当し、当該取引は非課税取引であるとしたもので、消費税及び地方消費税の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分を一部取消しております。
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|2018年10月1日 月曜日
相続税財産評価Q&A95 非上場株⑨
相続税財産評価 非上場株⑨
Q95
①直前期末から課税時期までの間に転換社債の転換があった場合、社債(負債の部)から株式(資本の部)へ組み変わるため,財産内容に変動がありますが、1株当たりの配当や利益や純資産(比準要素)の内容に調整を加えてもよいですか。
また,次の場合はどうですか。
②増資
③減資
④組織変更
A95
①転換社債の転換があった場合
転換社債は,一定の条件のもとに自由に株式に転換する権利が付与された社債で,株式への転換があるまでは一般の社債(負債)となんら変わりません。ご質問の転換社債も,直前期末時点では単なる社債に過ぎないため,発行済株式数や純資産価額に変化があったとすることはできません。
類似業種比準価額の計算は,直前期末の決算数値に基づいて行います(評基通180)。直前期末の決算も,未転換の社債は負債に計上しているはずですから,そのままの数値で類似業種比準価額の計算に用いることができます。したがって,直前期末の決算数値による比準要素に調整を加える必要はありません。しかし,類似業種比準価額は直前期末を基準としているため,増資前の旧株1株当たりの価格として算出されますので,課税時期までの間に増資(転換)が行われたときは,発行済株式数も増加していますので,増資後(権利落ち)の価格に修正する必要があります(評基通184)。
なお,未転換の社債は負債として扱われますが,潜在的には株式の性格を持つため,修正株価(全部転換を仮定した株価)が転換価格を上回る時は,修正株価をもとに未転換社債を評価することとしています(評基通197-5(3))。したがってこの場合,株式の評価も未転換社債の評価に連動して,未転換社債が全部転換したと仮定した株価(修正株価)に修正する必要がありますので注意してください。
②増資があった場合
転換社債の転換による増資の場合と同様です(評基通184)。
③減資があった場合
増資の場合と同様に比準要素の調整は必要なく,株価の修正が必要になります。
株式の評価は1株当たりの価格として算定されますから,減資については発行済株式数の減少という側面から,実質的減資と形式的減資に分けて考えます。
(実質的減資)有償による減資は,出資の払戻しと株式数の減少が伴いますので,類似業種比準価額の修正は不要です。
(形式的減資)無償による株式の消却や併合は,株主の持分には変化がないまま,株式数だけが減少しますので,下記のように計算されます。
減資前の類似業種比準価額の株価÷減資後の発行済み株式数=減資後の株価
④組織変更があった場合
組織変更は法形式上,解散と設立の経過をたどりますが,法人格の同一性を保持したまま他の種類の会社に変更するに過ぎないため,法人税法上も事業年度は区分されず継続することとしています(法基通1-2-2)。
したがって,仮に直前期中に組織変更があったとしても,比準要素の調整は不要です。
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|2018年9月28日 金曜日
【時事解説】事業承継の選択肢としてのM&A
記事提供者:(株)日本ビジネスプラン
中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、親族内・従業員承継で後継経営者が見つからない場合などの選択肢として「社外への引継ぎ」をあげており、引継ぎ先を選定するためのマッチングが合意に至ればM&A等の実行を検討する旨が記載されています。こうした背景から、経営資源を次世代に引き継いでいく選択肢の一つとして、中小企業のM&Aへの関心が高まっています。
2018年版中小企業白書に基づいて中小企業におけるM&Aの実態についてみると、中小企業において実際にM&Aを実施したことのある企業の割合は11.6%と現状はそれほど多くはないものの、直近のM&A実施時期については「2015年以降」と回答した割合が44%を占めており、足もとでM&Aが盛んになっていることがうかがえます。
買い手企業側のM&Aの実施目的をみると、「売上・市場シェアの拡大」が最も多く、次いで「事業エリアの拡大」となっており、付加価値向上を企図してM&Aを行う企業が多いことがうかがえます。
一方でM&Aをした相手先(売り手企業側)の経営者年齢についてみると、「60歳代」と「70歳代以上」と合わせた割合が約7割を占めています。また、相手先の経営者年齢別に相手先のM&Aの目的をみると、相手先経営者の年齢が「60歳代」や「70歳代以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高くなっています。このことから経営者が高齢となり後継者不在の企業においてはM&Aが活用されていることがうかがえます。
このように中小企業のM&Aでは、売り手企業側が事業承継を目的としている一方で、買い手企業の多くは事業拡大を目指しており、これらを結び付けていくことがカギとなるのです。
では、中小企業では事業承継を契機としたM&Aの取組みが具体的にどのように行われているのでしょうか。そこで2018年版中小企業白書で紹介され後継者不足に悩む小規模な調剤薬局の受け皿となっている株式会社大信薬局(本社:福岡県北九州市、従業員330名)の取組みについてみていきましょう。
株式会社大信薬局は、北九州を中心に調剤薬局やドラッグストアを運営する企業です。現社長が経営を引き継いで以降、様々な経営改革を進める中で、成長に向けた施策として特に小規模な調剤薬局のM&Aに特化しつつ店舗数を拡大させてきました。
売り手の多くは、医薬分業が進んだ約30年前に独立した薬剤師であり、現在は60歳前後になり事業承継を考える方が多いことから、現社長はそういった調剤薬局のオーナーやその関係者を訪問し、譲渡先の候補の一つとして先方に認識してもらえるように話をしてきました。その結果、地道に構築してきた人脈から紹介を受けるケースに次いで、オーナーから直接問い合わせを受けるケースが多くなっています。M&A後は、地域や市民に根付いた従来の店舗運営を基本としつつも、仕入れや間接部門の効率化を図り、生産性を向上させています。
最近では、店舗で働く薬剤師の人手不足が深刻化しており薬剤師を自力で確保できず、M&Aを考えるオーナーもおり同社の人材供給力への期待が高まっていることから、同社では福岡県内の大学を中心に、薬剤師のインターンや新卒採用を強化しています。
このように小規模事業者においてもM&Aが後継者問題解決の一つの選択肢として活用されているのです。
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