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民法

2016年9月30日 金曜日

民法親族編その13・・・親子①

民法親族編その13・・・親子

1、 実子
 親と血縁関係のある子を実子と呼び、養子縁組により親子関係が成立した子を養子と呼びます。
 実子には、嫡出子と非嫡出子があります。嫡出子とは父母の婚姻関係が継続している間に生まれた子を言い、そうでない子は非嫡出子となります。嫡出子は父との親子関係は推定されますが、非嫡出子は、父の認知がない限り父との親子関係は生じません。
 嫡出子は父母の氏を称し、戸籍も父母の戸籍に入り、父母の共同親権に服します。これに対して非嫡出子は、母の親権に服することになります。

2、 嫡出の推定
婚姻中の夫婦で妻が妊娠した場合は、その夫の子供と推定されます。しかし、いつ妊娠したかを証明することは実際には困難です。そこで、婚姻の日から200日後、または婚姻の解消・取り消しの日から300日以内に生まれた子供は婚姻中に妊娠したものと推定されます。この推定により、妻の産んだ子供は、その子供(嫡出子)との推定がされることになります。

3、 嫡出否認の訴え
 いったん嫡出の推定がされると、妻の産んだ子供が、夫の子ではないときでも、嫡出否認の訴えを起こさなければ推定を覆すことはできません。この訴えを起こせるのは原則として夫だけで、相手方は子供または子供の親権を持つ母親になります。親権を持つ母がいない場合には、家庭裁判所が選任した特別代理人が相手方となります。

 嫡出否認の判決が確定すれば、子供は初めから嫡出子でなかったことになります。なお、嫡出否認の訴えは、夫が子供の出生を知ったときから1年以内に提起しなければなりません。

4、 推定を受けない嫡出子
 民法上は、婚姻成立後200日を経ないで生まれた子は、嫡出子にはなりません。しかし、婚姻届けを提出する前から内縁関係に入り、婚姻後200日以内に夫の子供が生まれてくることはよくあります。そのため実際の戸籍実務では、婚姻後200日以内に生まれた子供であっても、すべて嫡出子として受け付けています。判例も同じ取り扱いをしています。

 このような子供は「推定を受けない嫡出子」と呼びます。このケースで、自分の子供ではないとの訴えは「嫡出否認の訴え」ではなく、親子関係不存在確認の訴えをすることになります。

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2016年9月23日 金曜日

民法親族編その12…裁判離婚②

民法親族編その12
1、 離婚原因
 裁判離婚では、離婚原因と認められる理由として、
(1)配偶者に不貞行為があった。
(2)配偶者から悪意で遺棄された。
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでない。
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない。
(5)その他婚姻が続けられない重大な理由があるとき。
以上の五つを挙げています。
ただし、裁判所は、(1)から(4)までの理由があった場合でも、回復の見込みがあると判断したときは離婚の請求を棄却することもあります。
 
 離婚の原因というのは、さまざまなことが考えられますが、民法上は5つに限定しています。その中で(5)その他婚姻が続けられない重大な理由があるときとは、例えば、暴行・虐待、異常な性生活の強要、重大な疾病ないし身体的欠陥、性格の不一致などが挙げられます。また、性交不能も婚姻を継続しがたい重大な理由になり、慰謝料請求も認められることがあります。

2、 有責配偶者は離婚請求不可
 夫婦の間に離婚原因があったとしても、離婚原因を作った配偶者(有責配偶者)の側からは離婚請求はできません。これを認めると、不貞行為などを行った配偶者の勝手な離婚請求を許すことになるからです。
 ただし裁判所は、夫婦の別居生活が長期に及び、そして夫婦の間には未成熟の子供がいないという場合に限り、有責配偶者からの離婚請求も認められるとしています。しかし、相手方の配偶者が、離婚によって精神的、社会的、経済的に過酷な状況に置かれるおそれのあるときには認められません。

 有責配偶者からの離婚請求として離婚が認められなかった例として、ダブル不倫をしている夫婦の一方が離婚請求した事件で、破たんの責任は後から不倫をした夫側にあり妻の不倫は解決済みの問題であるとして離婚請求が棄却されています。また、嫁と姑の対立が原因離婚が争われた事件で、夫婦対立の主な原因は離婚請求した夫側にあり、妻は反省して夫の元に戻る希望を持っていること等を理由として離婚請求は認められませんでした。

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2016年9月16日 金曜日

民法親族編その11…裁判離婚①

民法親族編その11…裁判離婚①

1、 裁判離婚の前提条件
 裁判上の離婚に訴えるためには、相手方が離婚に応じないという事実だけでなく、民法に定める五つの離婚原因のうちいずれかの存在が必要になります。

配偶者が協議離婚に応じない場合の手段として「裁判所に離婚の訴えを起こして婚姻関係を解消した」とはよく聞く話です。しかし、裁判による離婚にはいくつかの規定や段取りがあります。
まず最初に、離婚を裁判に持ち込むための前提条件として、民法の定める離婚原因が相手方にある必要があります。また、離婚の協議が整わないからといって、すぐに裁判所に訴えを提起できるわけではなく、最初に家庭裁判所に調停をもとめなければなりません(調停前置主義)。その後の裁判離婚は、婚姻事件や養子縁組事件、親子関係の事件に関する特別法である人事訴訟手続法が適用されます。

離婚の成立によって、離婚による復氏、未成年者があるときは親権者の決定、財産分与、有責配偶者への慰謝料請求などの法律的効果が生じます。なお、復氏した者でも離婚の際に称していた氏を使いたい場合には、離婚の日から3か月以内に届け出をすればしようできます。
 財産分与は、主として夫婦生活共同中の共通財産の清算という意味を持ちますが、離婚によって生活ができなくなる配偶者の一時的な扶養という意味もあります。

2、 調停前置主義
 協議離婚が成立しない場合には、最初に調停を申し立てなければなりません。調停は、家事審判官と家事調停委員により構成される調停委員会で行われます。調停により離婚の合意が成立すると調書が作成され、この時点で離婚が成立します。これがいわゆる調停離婚です。

 調停が成立しない場合でも、家庭裁判所は職権で審判をすることができます。これは当事者の間に離婚についての合意はあるが、離婚に伴う財産分与や、子の監護の方法などに意見の食い違いがあって離婚が成立しない場合などの解決を図る方法で、審判離婚といいます。
 この調停でも決着がつかない場合に、初めて裁判ということになります。

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2016年9月9日 金曜日

民法親族編その10…協議離婚②

民法親族編その10…協議離婚②

4、離婚の取り消し
 詐欺や脅迫によってなされた離婚は取り消すことができます。ただし、詐欺や強迫による離婚を取り消すことができるのは、当事者がだまされたことが分かったときから3ヵ月以内とされています。
 離婚取り消しは、婚姻取り消しと異なり、その効果は届け出の時点に遡及します。

5、離婚の効果
 離婚によって、当事者は再婚が可能となりますし、離婚成立と同時に婚姻関係も消滅します。同じく、夫婦財産関係も消滅します。しかし、日常家事などで婚姻中に発生した債務に関する連帯責任は消滅しません。また協議離婚した者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求できます。この規定は裁判離婚にも準用されています。財産分与について当事者の意見が整わないときは、家庭裁判所が審判します。

*離婚に伴う慰謝料・および財産分与に関して税金はどうなるでしょうか?まず慰謝料についてですが、社会通念上相当と認められる金額であれば所得税・贈与税が課されることはありません。財産分与も同様に相当な金額の範囲内であれば所得税・贈与税が課されることはありません。

 ただし、財産分与で土地または家屋を対象とした場合は、分与した側に譲渡所得に該当するものとして所得税および住民税が課税される可能性があります。たとえば財産分与として自宅の土地建物を配偶者に引き渡した場合、次のような取り扱いとなります。
(1) その土地建物の時価を売却価格とみなします。
(2) 取得時の購入価格から建物の償却費相当額(非業務用の場合1.5倍)を差し引いた金額を(取得費という。)算出します。
(3) (1)-(2)=譲渡所得の金額(自宅の場合3,000万円までは居住用財産の譲渡所得の特別控除を差し引くことができます。
(4) 譲渡所得×税率=所得税及び住民税
税率・・・長期譲渡所得(購入後5年超)20%(居住用の軽減税率あり)
     短期譲渡所得(5年以下)40%の範囲内

地価が上昇傾向にある都心部では、離婚にともなう財産分与で分与した側に思わぬ譲渡所得税が課せられるケースもあるので注意が必要です。
 

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2016年9月2日 金曜日

民法親族編その9・・・協議離婚①

民法親族編その9

1、協議離婚
協議離婚とは、夫婦の間で離婚しようという意思の合致があった場合に成立する離婚です。男女がお互いの意思の合致によって婚姻することができるのと同様に、婚姻を解消させようというお互いの意思が合致すれば、婚姻関係を解消することができます。

2、離婚の届け出
 協議離婚は、戸籍法の定めに従って役所に届け出ることで効力を生じます。離婚する夫婦の間に未成年の子がいる場合は、夫婦のいずれか一方を親権者と定めて離婚届け出書に記載します。

 協議離婚の届け出は、その提出に本人が出頭する必要はなく郵送でも構いません。また届出書も本人が自書する必要はありません。そのため、夫婦の一方には離婚の意思がない場合でも、他方が離婚届出書を偽造して届け出ることがありえます。このような可能性のある場合は、戸籍実務で行われている協議離婚不受理申し出によって、離婚届の受理を防ぐことができます。不受理申し出がある場合は、役所で離婚の届け出の受理を拒絶することが可能となります。

3、離婚の無効
 協議離婚が無効になるケースとは、離婚届出の時点で当事者に離婚する意思がない場合です。当事者の一方、あるいは双方が知らない間に無断で離婚の届け出が提出されたり、離婚の合意はしても、届け出前に意志が変わったときなどがこのケースに当たります。

 民法では「無効な行為は追認しても遡及効はなく新たに行ったこととする」としています。しかし、この無効な離婚については、追認することができるとしています。
 判例によると、無効な離婚を届け出た後、離婚という現実があり、しかも離婚の事実が継続し、当事者も離婚の届け出を有効とする意思を持っている場合には遡及効を認めています。つまり、このケースでは、離婚届け出の時点に遡って離婚が認められるわけです。

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