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民法

2015年5月29日 金曜日

民法相続編その15・・・承認及び放棄②

民法相続編その15は、承認及び放棄の②として限定承認の制度を取り上げます。

3、限定承認(民922条)
 相続財産を調査しても、財産と債務のどちらが多いか判断がつかない場合があります。このような場合に限定承認という方法があります。限定承認とは、相続によって得た財産を限度として債務を負担することを言います。つまり残された債務が財産を上回るときでも相続した財産の範囲で支払えばよく、上回る部分は支払う必要がないのです。これは、被相続人の相続財産と相続人固有の財産を区別して清算する方法です。

 限定承認する場合も相続放棄と同様、相続が開始したことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません。その際には財産目録を調整して提出する必要があります。相続人が複数存在する場合の限定承認は、法律関係が複雑になることを避けるために、共同相続人全員が共同して行わなければなりません。

 実務上は、共同相続人中一人を残して相続放棄をし、残った一人が限定承認をする方法が簡便です。

 限定承認は、手続きが煩雑と考えられ敬遠されがちですが、下記のような場合にも検討に値すると思われ専門家に相談すべきです。
1、財産のほうが多いと思われるが、相続人の知らない債務の存在が疑われる場合、存在は明らかでも金額が確定していない債務がある場合など
2、不動産と借金があるが、不動産の売却をして借金を返済をせざるを得ない場合
3、借金のほうが多いと思われるが、財産の価額や不明な資産がある場合

 限定承認をした場合、注意すべき点として譲渡所得が課税されることです。資産を売却して返済するにあたって譲渡所得に対する税を支払わなければならないのは致し方ありません。しかし、売却しないで残った財産についても時価で譲渡されたものとみなして所得税が課税されます。被相続人の存命中の値上がり益について清算し、譲渡所得に対する税も含めて相続財産の範囲で支払えばよいとされていますが、相続財産の一部でも売却せずに債務の弁済が可能な場合には、限定承認は損な選択となってしまいます。

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2015年5月22日 金曜日

民法相続編その14・・・承認・放棄等①

民法相続編その14は、承認及び放棄を取り上げます。

「相続の承認と放棄」
1、単純承認と放棄等
相続財産の中には、被相続人の借金や保証人としての地位など相続してもありがたくないものも含まれます。資産の方が多ければよいのですが、借金のほうが多い場合や不明の場合には、一定の手続きを取らなければ借金の相続を認めたことになってしまいます。単純承認といいますが、何もしなければ財産および借金すべてを相続します。

 民法915条では、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(熟慮期間)に単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない。」と規定しています。
また、この熟慮期間は利害関係人の請求により3か月伸長することができます。状況により再延長も認められます。
 また、熟慮期間の起算日については、通常は被相続人が死亡したことを知った日ですが、相続人が相続財産(債務)の全部または一部の存在を認識したとき等とするのが相当であるとする判例があります。
 
2、相続の放棄
 財産も一切相続しない代わりに債務も一切相続しない方法が、相続の放棄です。相続人は相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述することにより相続を放棄することができます。相続放棄の申述を受けた家庭裁判所は、その申述が本人の意思によるものかどうかを確認したうえで受理の審判をします。

 相続の放棄は、限定承認と異なり共同相続人がいる場合でも個々の相続人が単独で行うことができます。相続放棄した者は、初めから相続人でなかったものとされます。したがって相続分の算定に当たっては、相続放棄者は初めから除外することになります。
 また、相続放棄は自分への相続が発生した後でなければ行うことができず、相続開始前に申述しようとしても認められません。

借金が多く相続を放棄する場合には、当然ですが法定相続人の全員が放棄する必要があるので注意が必要です。

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2015年5月15日 金曜日

民法相続編その13・・・遺産分割②

民法相続編その13は、遺産分割の2回目です。

(3)遺産分割には債務も含まれる
 相続財産に債務が含まれている場合は注意が必要です。もし法定相続分と異なる分割協議が成立しても、債務については法定相続分の割合に従って相続されたものとして認定されるからです。したがって債権者からも請求されることになります。これを防ぐためには債務も分割協議の対象とするとともにあらかじめ債権者の承諾を得る必要があります。

(4)特殊な遺産分割の方法
 相続財産が不動産のように分割が容易でない場合、代償分割・換価分割という遺産分割の方法があります。代償分割は、特定の相続人が不動産を取得する代わりに代償として他の相続人に金銭を支払って調整する方法です。代償金の金額をいくらとするのか、相続人に支払い能力があるのかが問題となります。換価分割は、相続した不動産を売却し売却代金を分割する方法です。遺産を手放さなければならないことと、不動産の売却による譲渡所得が発生するという問題が生じます。
 その他に、相続分の譲渡という遺産分割と同様の効果を得られる方法があります。相続人同士の譲渡と相続人以外の第三者への譲渡がありますが、第三者へ譲渡した場合その者が相続人と同様の権利を得ますので現実的ではありません。有償でも無償でも構わないので遺産分割でもめている場合に活用できます。

(5)遺産分割不成立の場合
 遺産分割協議が成立するためには、相続人全員の合意が必要です。共同相続人のうち1人でも反対者がいるときは、家庭裁判所の調停制度を利用することが考えられます。この調停では、裁判所の調停委員が当事者のそれぞれの言い分を聞いて、共同相続人の全員が納得できる方法を探ることになります。
 調停が成立すると、調停調書が作成されます。この調書に記載された内容は確定した審判と同じ効力を持ちます。この調書によって不動産の相続登記などを行うこともできます。
 調停を行っても合意できない場合には、次は審判の手続きをとることになります。審判は話し合いではなく、裁判官が決定を下すことになります。

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2015年5月8日 金曜日

民法相続編その12・・・遺産分割①

民法相続編その12は、遺産分割の①について触れていきます。

「遺産分割」
(1)遺産の分割
相続人が1人だけの場合、相続財産はすべてその相続人のものになるのですから問題はありません。しかし相続人が複数存在する場合には、相続が開始した時の相続財産は相続人全員で共有する状態になります(民898条)。この状態では、共同相続人は勝手に相続財産を処分したりすることはできず、非常に不便な状態といえます。

その後は、遺言があればそれに従って各相続人の相続分が決まり、遺言がなければ話し合いによって決まることになります。相続分が決まったら、相続人全員の協議により分割方法を決定します。この時に、遺言や法定相続分とは異なった分割で話がつけば、相続人全員の意思として分割協議の結果が優先されることになります。この話し合いのことを遺産分割協議と呼びます。

相続人全員の共有財産である相続財産は、遺産分割することによって初めて相続人固有の財産と同じように取り扱うことができるようになります。

民法906条では、遺産の分割は、遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれを行うものとしています。ごく当たり前のことを規定しているにすぎませんが、遺産分割で揉めている状況では、相続人がこの一切の事情を無視して法定相続分による相続権を主張するケースがほとんどです。法定相続分のみが独り歩きしているように感じられますが、民法906条の考え方こそ大事にすべきです。

(2)遺産分割協議書
 遺産分割協議がまとまったときは、紛争を防止するために遺産分割協議書を作成します。この遺産分割協議書は、不動産を相続した場合は相続登記の際に、また、相続税の申告の際にも使用します。そのために実印を使用し、印鑑証明書を各通に添付します。

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2015年5月1日 金曜日

民法 相続編 その11・・・相続分④

民法 相続編 その11は、相続分④「特別受益と寄与分」についてです。

4、特別受益制度による持ち戻し(民903条)

② 特別受益額の持ち戻し計算
  特別受益者がいる場合は、被相続人の相続開始時点の財産の価額に、生前に贈与された財産の価額を加えて、その総額を相続財産として計算し直します。そのうえで、相続人全員で法定相続分に従って配分し直すわけです。この相続分から遺贈または生前贈与の額を差し引いたものが特別受益者の相続分となります。
  ただし、特別受益者の相続分を計算したときに、贈与や遺贈の価額がそれを超えることがあっても、特別受益者はその差額分を返還する必要はありません。

③ 適用されない場合
   特別受益制度は、相続人全員の公平を図るとともにそれが被相続人の意思に合致すると考えられるために設けられています。したがって被相続人が「生前の贈与や遺贈を相続人に特別に与え、残った財産を共同相続人で分配する」意思を表示していればそれに従うことになります。この場合は特別受益制度の適用はありません。

5、寄与分制度(民904条)
  寄与分制度とは、同じく共同相続人の公平を図る制度ですが、特別受益制度とは逆の考え方によります。
  例えば被相続人の事業を助け、労務や財産を提供するなど相続人の中に被相続人の財産増加に寄与した者がいる場合、その功績を無視して財産の増加分を単純に相続財産に含めることは不公平になります。このような場合は、その寄与分を相続財産から控除して、寄与者が寄与分の額を相続分とは別に相続することになります。
 
 寄与分の額は、相続人同士の協議で決めますが、決まらない場合は家庭裁判所が決定することになります。しかし、現実にはなかなか認められないのが実態です。

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