民法
2016年10月28日 金曜日
民法親族編その17…扶養①
民法親族編その17…扶養①
1、 扶養義務
子供や老人、心身に障害のある人など、自分の力で生活することが困難な人に対しては、国家や地方自治体が行う公的扶助が存在します。しかし現状は満足のいくものではありません。
民法は、一定の親族間にお互いに扶養する義務を定め、経済的援助を行わせることで各人が生活に困窮することのないようにしています。
2、 扶養義務のある親族の範囲
民法は、互いに扶養の義務がある親族の範囲を次のように定めています。
① 祖父母、父母、孫といった直系の血のつながりのある者同士と兄弟姉妹
② 裁判所は、特別の事情がある場合には、伯父(叔父)、伯母(叔母)、甥、姪を限度として3親等内の血のつながった親族とその配偶者についても扶養義務を負わせることができるとしています。
直系の血のつながりのある者とは、実の親子関係だけでなく、養親子関係も含みます。兄弟姉妹とは、父が違ったり、母が違ったりという半血の場合も含みます。また、養子同士や養子と養父母の実子という関係も兄弟姉妹に含まれます。ただし兄弟姉妹の配偶者同士は兄弟姉妹とはなりません。
なお、婚姻関係にある者つまり配偶者同士は当然に扶養義務があります。
3、 扶養義務の順序
扶養する義務がある者が複数いる場合は、当事者が話し合いによって決定することになります。この話し合いで決まらないときや協議ができないときは、扶養を求めるものの扶養の必要度や扶養するものの資力その他の事情を考慮して家庭裁判所が決定します。
4、 扶養を受ける権利
扶養を受ける権利とは、権利者の一身に専属しますので他人が行使することはできません。したがって、扶養を受ける権利を放棄したり他人に譲り渡したりすることはできないこととなります。
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|2016年10月21日 金曜日
民法親族編その16親権②
民法親族編その16親権②
3、親権の具体的内容
親権の具体的内容としては、身上監護に関するものと財産管理に関するものとに分けられます。
身上監護に関するものとしては、(1)監護・教育、(2)居所の指定、(3)懲戒(4)職業の許可があります。最後の職業の許可とは、特定の営業を許可するだけでなく、他人に雇われることについての許可も含みます。
財産管理に関するものとは(1)子供が行う取引行為に対する同意、(2)子供に代わって取引行為を行う(3)子供の財産の管理・処分があります。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければなりません。
父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられないこととされています。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りではありません。
なお、親権者と子の利益が相反する行為を行う場合は、親権者は子のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。また、複数の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。
4、親権喪失
親権者が親権を悪用したり、ひどく品行が悪い場合は、子供の親族または検察官の請求によって、家庭裁判所は親権喪失の宣告を下すことができます。
また、身上監護については問題がなくとも、不適切な財産管理を行って財産が不当に減少するようなことがあったには、親族または検察官の請求により、家庭裁判所は財産管理権だけを失わせることができます。
5、親権の辞退
親権とは権利であると同時に義務でもありますから、安易に辞退を認めることはできません。しかし親権者は、長期間の不在などのやむを得ない理由があるときには、家庭裁判所の許可を得て辞退することができます。
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|2016年10月14日 金曜日
民法親族編その15…親権①
民法親族編その15…親権①
1、 親権とは
成年に達しない子は、父母の親権に服します。子が養子であるときは、養親の親権に服します。
父母が未成年の子供に対して持っている、監督・保護・教育し、財産を管理する権限を親権といいます。
親権とは子供の利益のために認められるものですから、子供の利益の範囲を超える行為は権利の乱用となり、親権喪失の原因となります。
2、 親権者
子供が未成年で父母が婚姻中の場合は、その父母が共同して親権者となります。父母の一方が長期の不在や、禁治産宣告、親権喪失などによって親権を失ったときは、他の一方が単独に親権を行います。
父母が離婚した場合は、協議離婚であれば協議で父母の一方を親権者に決定し、裁判離婚であれば裁判で決定します。
嫡出でない子供の場合は、母が単独で親権者となりますが、父が認知したときは父母の協議、または裁判所の審判で父を親権者とすることもできます。
ただし、20歳未満の子供でも結婚した場合は、民法上成年者として扱われますから、親権は及ばなくなります。
養子は、実親でなく養親が親権者となります。養親が死亡した場合でも、実親の親権が復活することはなく後見人が選任されることになります。
*父母が離婚し一方が親権者となったのち、その親権者が死亡した場合どうなるのでしょうか?親権者の死亡により「未成年者に対して親権を行う者がないとき」に該当するため後見開始の事由に当たります。
離婚した父母のもう一方に親権が復帰するのではありません。親権者の変更については、単独親権者の死亡の場合は、上記後見開始の規定があるのでそのような場合でも親権者変更の手続きがとれるのかどうかは見解の分かれるところですが、最近の裁判例では肯定的です。
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|2016年10月7日 金曜日
民法親族編その14・・・親子②
民法親族編その14・・・親子②
1、 認知。
父または母は非嫡出子を認知することができます。ただし、母は分娩の事実によって母子関係が生じますから認知の必要はありません。
認知は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって行います。そして認知をするには、父又は母が未成年者又は成年被後見人であるときであっても、その法定代理人の同意を要しません。また、遺言によって認知をすることができます。
ただし、成年の子は、その承諾がなければ、これを認知することができません。
2、 認知の効果
認知は、出生の時にさかのぼってその効力を生じます。ただし、第三者が既に取得した権利を害することはできません。また、認知をした父又は母は、その認知を取り消すことができません。一方、子その他の利害関係人は、認知に対して反対の事実を主張することができます。
3、 認知の訴え
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができます。ただし、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、この限りではありません。
4、 準正
父が認知した子は、その父母の婚姻によって嫡出子としての身分を取得します。これを婚姻準正と呼びます。
また、婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得します。
5、 子の氏
嫡出である子は、父母の氏を称します。ただし、子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏を称することになります。嫡出でない子は、母の氏を称します。
子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができます。
父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができます。
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