民法親族編
2016年9月16日 金曜日
民法親族編その11…裁判離婚①
民法親族編その11…裁判離婚①
1、 裁判離婚の前提条件
裁判上の離婚に訴えるためには、相手方が離婚に応じないという事実だけでなく、民法に定める五つの離婚原因のうちいずれかの存在が必要になります。
配偶者が協議離婚に応じない場合の手段として「裁判所に離婚の訴えを起こして婚姻関係を解消した」とはよく聞く話です。しかし、裁判による離婚にはいくつかの規定や段取りがあります。
まず最初に、離婚を裁判に持ち込むための前提条件として、民法の定める離婚原因が相手方にある必要があります。また、離婚の協議が整わないからといって、すぐに裁判所に訴えを提起できるわけではなく、最初に家庭裁判所に調停をもとめなければなりません(調停前置主義)。その後の裁判離婚は、婚姻事件や養子縁組事件、親子関係の事件に関する特別法である人事訴訟手続法が適用されます。
離婚の成立によって、離婚による復氏、未成年者があるときは親権者の決定、財産分与、有責配偶者への慰謝料請求などの法律的効果が生じます。なお、復氏した者でも離婚の際に称していた氏を使いたい場合には、離婚の日から3か月以内に届け出をすればしようできます。
財産分与は、主として夫婦生活共同中の共通財産の清算という意味を持ちますが、離婚によって生活ができなくなる配偶者の一時的な扶養という意味もあります。
2、 調停前置主義
協議離婚が成立しない場合には、最初に調停を申し立てなければなりません。調停は、家事審判官と家事調停委員により構成される調停委員会で行われます。調停により離婚の合意が成立すると調書が作成され、この時点で離婚が成立します。これがいわゆる調停離婚です。
調停が成立しない場合でも、家庭裁判所は職権で審判をすることができます。これは当事者の間に離婚についての合意はあるが、離婚に伴う財産分与や、子の監護の方法などに意見の食い違いがあって離婚が成立しない場合などの解決を図る方法で、審判離婚といいます。
この調停でも決着がつかない場合に、初めて裁判ということになります。
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|2016年9月9日 金曜日
民法親族編その10…協議離婚②
民法親族編その10…協議離婚②
4、離婚の取り消し
詐欺や脅迫によってなされた離婚は取り消すことができます。ただし、詐欺や強迫による離婚を取り消すことができるのは、当事者がだまされたことが分かったときから3ヵ月以内とされています。
離婚取り消しは、婚姻取り消しと異なり、その効果は届け出の時点に遡及します。
5、離婚の効果
離婚によって、当事者は再婚が可能となりますし、離婚成立と同時に婚姻関係も消滅します。同じく、夫婦財産関係も消滅します。しかし、日常家事などで婚姻中に発生した債務に関する連帯責任は消滅しません。また協議離婚した者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求できます。この規定は裁判離婚にも準用されています。財産分与について当事者の意見が整わないときは、家庭裁判所が審判します。
*離婚に伴う慰謝料・および財産分与に関して税金はどうなるでしょうか?まず慰謝料についてですが、社会通念上相当と認められる金額であれば所得税・贈与税が課されることはありません。財産分与も同様に相当な金額の範囲内であれば所得税・贈与税が課されることはありません。
ただし、財産分与で土地または家屋を対象とした場合は、分与した側に譲渡所得に該当するものとして所得税および住民税が課税される可能性があります。たとえば財産分与として自宅の土地建物を配偶者に引き渡した場合、次のような取り扱いとなります。
(1) その土地建物の時価を売却価格とみなします。
(2) 取得時の購入価格から建物の償却費相当額(非業務用の場合1.5倍)を差し引いた金額を(取得費という。)算出します。
(3) (1)-(2)=譲渡所得の金額(自宅の場合3,000万円までは居住用財産の譲渡所得の特別控除を差し引くことができます。
(4) 譲渡所得×税率=所得税及び住民税
税率・・・長期譲渡所得(購入後5年超)20%(居住用の軽減税率あり)
短期譲渡所得(5年以下)40%の範囲内
地価が上昇傾向にある都心部では、離婚にともなう財産分与で分与した側に思わぬ譲渡所得税が課せられるケースもあるので注意が必要です。
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|2016年9月2日 金曜日
民法親族編その9・・・協議離婚①
民法親族編その9
1、協議離婚
協議離婚とは、夫婦の間で離婚しようという意思の合致があった場合に成立する離婚です。男女がお互いの意思の合致によって婚姻することができるのと同様に、婚姻を解消させようというお互いの意思が合致すれば、婚姻関係を解消することができます。
2、離婚の届け出
協議離婚は、戸籍法の定めに従って役所に届け出ることで効力を生じます。離婚する夫婦の間に未成年の子がいる場合は、夫婦のいずれか一方を親権者と定めて離婚届け出書に記載します。
協議離婚の届け出は、その提出に本人が出頭する必要はなく郵送でも構いません。また届出書も本人が自書する必要はありません。そのため、夫婦の一方には離婚の意思がない場合でも、他方が離婚届出書を偽造して届け出ることがありえます。このような可能性のある場合は、戸籍実務で行われている協議離婚不受理申し出によって、離婚届の受理を防ぐことができます。不受理申し出がある場合は、役所で離婚の届け出の受理を拒絶することが可能となります。
3、離婚の無効
協議離婚が無効になるケースとは、離婚届出の時点で当事者に離婚する意思がない場合です。当事者の一方、あるいは双方が知らない間に無断で離婚の届け出が提出されたり、離婚の合意はしても、届け出前に意志が変わったときなどがこのケースに当たります。
民法では「無効な行為は追認しても遡及効はなく新たに行ったこととする」としています。しかし、この無効な離婚については、追認することができるとしています。
判例によると、無効な離婚を届け出た後、離婚という現実があり、しかも離婚の事実が継続し、当事者も離婚の届け出を有効とする意思を持っている場合には遡及効を認めています。つまり、このケースでは、離婚届け出の時点に遡って離婚が認められるわけです。
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|2016年8月26日 金曜日
民法親族編その8 婚姻⑥
民法親族編その8
1、 婚姻費用の分担
婚姻費用とは、未成熟の子を含む夫婦共同体の維持に必要な費用のことで、衣食住などの日常の生活の費用、子供の養育に関する費用、交際費、娯楽費、医療費などがあります。これらの費用の分担は、通常は夫婦間の合意によって決定されますが、別居や離婚のときなどの時に問題となります。相手方が履行しない時など夫婦間で決められないときは、家庭裁判所に申し立ててその審判によって決定することもできます。
*夫婦が別居する場合において、婚姻関係が事実上破たんしていても婚姻が解消されない限り婚姻費用は分担しなければなりません。このような場合でも、夫婦の協力扶助義務はなくならないためです。
ただし、別居の原因について責任のある有責配偶者から請求があった場合には、裁判所の判断は分かれているようです。
2、 日常家事債務
夫婦と未成熟の子の共同生活で、日常的に必要な事柄を日常家事と呼びます。第三者に対して、この日常家事に関する債務を負った場合は、夫婦は連帯して責任を取らなければなりません。この規定は、夫婦別産制の例外とも言える考え方です。夫婦の一方と取引した第三者の保護と、家事処理の便宜を調整した決まりと言えます。
この日常家事とは、生活必需品の購入、家屋の賃貸借契約の締結などのほか、生活必需品の購入のための借金契約なども含まれます。
また、夫婦が連帯して責任を負うということですが、これは夫婦の一方が締結した契約については、他の一方も連帯債務者としての責任を負うという意味になります。例えば、日常的な食料品代のため、食料品店に代金債務を負った場合は、購入したのが妻であってもその支払い責任は夫にもあるということです。
ただし、日常家事の範囲外の行為については、配偶者は責任を負いません。日常家事の範囲かどうかは難しい問題になりますが、例えば妻が高価な宝石を購入した場合などでは、原則として夫は支払い義務を負いません。
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|2016年8月19日 金曜日
民法親族編その7 婚姻⑤
民法親族編その7 婚姻⑤
1、 婚姻の法律的効果
結婚の成立により、夫婦は同じ性(法律上は氏)を称することとなります。また、夫婦は同居し、互いに協力・扶助すべきこと、未成年者は結婚により成年に達したとみなされることなどの効果および権利義務が発生します。さらに、夫婦共同生活に必要な費用(婚姻費用)は互いに分担することとしています。
2、 基本は夫婦別産制
民法は、夫婦であっても財産関係については別産制を採用しています。したがって、夫婦の一方が婚姻前から持っていた財産や、婚姻中でも自分の名義で取得した財産は,その者の特有の財産となります。また婚姻中には、夫婦どちらの物か不明の財産が生まれることがありますが、この場合には夫婦の共有財産と推定されます。
夫婦別産制では、夫婦の一方が財産を取得した場合、その財産取得や維持に配偶者の協力があったときはどうすべきか問題が生じます。具体的には夫の給与収入について、妻の貢献をどこまで認めるかということになります。この点について判例は、夫婦の一方が取得した財産に対する配偶者の協力は、財産分与請求権、相続権、扶養請求権によって処理されるとしています。
*専業主婦の預金は夫の財産か?
相続税の現場では、家族名義の預金が被相続人の財産ではないかとして税務署から指摘を受けることがあります。その状況はケーズバイケースですし、確かに被相続人が家族の名義を使っただけと思われる状況もあります。その中で問題となるケースにいわゆるへそくりも含めて専業主婦が婚姻後に蓄積した預金について、夫の預金ないしは夫婦共有の財産ではないかと指摘されることがあります。
名義預金か否かの判断基準に、資金の出所(誰が原資を得たのか)、管理運用(印鑑や通帳の作成者の作成・保管、通帳の出し入れを行っていたか)、果実の取得(利息や運用益をだれが取得していたのか)について検討されます。詳細は別な機会に説明しますが、夫婦間での贈与はなかなか認められないこともあり実務では注意が必要です。
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