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民法

2016年11月25日 金曜日

民法親族編その21…後見③

民法親族編その21…後見③

1、 任意後見制度
 任意後見契約とは、十分な判断能力を持っている状態で、将来判断能力が低下したときに、保護者(任意後見人)となってくれる者との間で契約を締結しておくものです。任意後見人になる者は個人に限らず法人でもかまいません。

 この契約は、将来自分の判断能力が低下したときには、生活や療養看護、財産の管理の全部または一部について、任意後見人に代理権を与える委任契約で、将来家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時から契約の効力が生じる旨の特約を付けておきます。

2、 任意後見契約
 任意後見契約の効力が生じた時には、本人は、十分な判断能力はない状態になっています。その時点で契約をやり直そうと思っても簡単にはいきません。ですから、任意後見契約は適法で有効に締結されたものであることが確実に保証される必要があります。そのためにこの契約は通常の契約書ではなく、公正証書によって締結しなければならないのです。
 任意後見契約の公正証書が作成されたら、公証人から登記所への嘱託によって任意後見契約の登記が行われます。

3、 判断能力が低下したとき
 任意後見契約の登記がされた後に、本人の判断能力が不十分と言える状態になったら、本人、配偶者、4親等内の親族、任意後見受任者(後見人になる者は、任意後見契約の効力が生じる前はこのように呼ばれます。)は、家庭裁判所に対して任意後見監督人の選任を申し立てることができます。任意後見監督人の選任には本人以外の者が申し立てたときは本人の同意が必要です。この申し立てに基づいて家庭裁判所が任意後見監督人を選任したら任意後見契約の効力が発生します。
 
 任意後見監督人は、任意後見人を監督し、家庭裁判所に定期的に報告を行います。そして任意後見人に不正な行為などがあれば、家庭裁判所は任意後見人を解任することができます。

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2016年11月18日 金曜日

民法親族編その20…後見②

民法親族編その20…後見②

1、 成年後見制度
 判断能力が欠けていたり、判断能力が不十分な人は、自分では正確な判断をしたつもりでも、だまされて予期せぬ損害を被ることがあります。こうしたことを避けるために、民法は判断能力に問題のある者を制限能力者として保護の対象としています。そして制限能力者に保護者をつけ、保護者の関与なしに行った法律行為は、取り消すことができることにしました。これが成年後見制度です。
 平成12年4月1日から、成年後見制度が施行、戸籍に記載されていた禁治産者、準禁治産者が、被後見人、被保佐人、被補助人に変わり、登記されることになりました。ここでは成年被後見人について解説します。

2、 被後見人
 「精神上の障害によって事理を弁識する能力(判断能力)を欠く状況にある者」について、一定の者からの申し立てにより家庭裁判所が後見開始の審判をして、保護者として成年後見人を選任します。この後見開始の審判を受けた者を成年被後見人と呼びます。「事理を弁識する能力を欠く状況」とは、ほぼ7歳未満の子供の能力程度と考えてください。また、強度の精神病者のような場合も含まれます。

 後見開始の審判を申し立てることができる一定の者とは、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人をいいます。ほかに任意後見法により任意後見受任者、任意後見人なども申し立てることができます。なお、老人福祉法や知的障害者福祉法などの規定によって、市町村長にも申立権があたえられる場合があります。

3、 成年後見人の権限
 この場合の後見人は、未成年者に後見人がつけられる場合と区別して、成年後見人と呼ばれます。成年後見人は、複数選任することができ、法人が就任することもできます。
 成年後見人には後見開始の審判によって、財産に関するすべての法律行為につき「代理権」と「取消権」が与えられます。「代理権」とは被後見人に代わって法律行為を行う権限で、「取消権」とは被後見人が自分一人で行った法律行為を取り消す権限です。しかし後見人に「同意権」はありません。被後見人は判断能力に欠け、同意の意味すら理解できない状態の者ですから、後見人に同意権を与えても意味がないからです。

4、 被後見人の行為の取消
 被後見人が自分で行った法律行為は取り消すことができます。後見人が代理して行為をしなければ完全に有効な行為にはならないのです。ただし、被後見人本人の自己決定権の尊重という観点から、日用品の購入のような日常生活に関する行為は本人自身で完全に有効にでき、取り消すことはできません。また、婚姻、協議上の離婚などの身分行為は本心に復していれば自分一人で有効にできます。

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2016年11月11日 金曜日

民法親族編その19…後見①

民法親族編その19…後見①
1、 親権者の代わりとなる未成年後見人
 未成年者の親権者がいない場合や、親権者がいても管理権を失っている場合には、未成年後見人が選任され、監督、療養、財産管理を行います。後見人の制度は未成年者だけではなく、精神上の障害により判断能力を欠く人々を保護するためにも有益な役割を持ちます。

2、 後見人の選任
 未成年後見人は、その未成年者の最後の親権者が遺言によって指定することできます。この指定がない場合には、親族や利害関係人の請求により家庭裁判所が選任します。

 成年被後見人に付される後見人は、家庭裁判所が個々の事案に応じて、最も適任な者を選任します。法人も後見人になることができます。

 未成年後見人が複数存在すると、意思統一が困難な場合がありますから、選任は必ず一人だけと決められています。これに対して、成年後見人は、多様な事務を実効的に遂行するために複数選任することができます。

3、 後見人の監督
 後見人の職務が適正、公正に行われているかを監督するために、後見監督人を選任することができますが、必ずしも選任する必要はありません。

4、 後見人の行う仕事
 後見人は、就任後すみやかに被後見人の財産を調査し、着手後1か月以内に調査を終了して、財産目録を作成しなければなりません。これにより、後見人の財産と被後見人の財産が混じり合わないようにするのです。

 未成年後見人は原則として親権者と同じ権利義務を持つことになります。成年後見人の場合は、成年被後見人の療養看護に努める義務があります。このとき、成年被後見人の意見を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければなりません。

5、 後見の終了
 未成年後見は、その者が成年に達したときには終了します。また成年後見は後見開始の審判が取り消されれば終了します。そして未成年後見、成年後見共通の終了原因として、当事者である未成年後見人、成年後見人の死亡、失踪宣告があります。

 同様に後見人自身の死亡、失踪宣告、辞任、解任、欠格事由が発生すれば、後見は終了します。

 後見が終了したときは、後見人は2か月以内に後見財産の管理状況を計算して、これを報告しなければなりません。

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2016年11月4日 金曜日

民法親族編その18…扶養②

民法親族編その18…扶養②
4、扶養を受ける権利
 扶養を受ける権利とは、権利者の一身に専属しますので他人が行使することはできません。したがって、扶養を受ける権利を放棄したり他人に譲り渡したりすることはできないこととなります。

5、扶養義務の内容
実際の扶養の仕方としては、引き取って扶養する場合や、経済的な援助を与えるだけの場合などがあります。どのような方法をとるかは、当事者同士の話し合いで決めるのが基本ですが、決まらない場合には裁判所の審判に委ねることになります。

扶養の実質的な内容に関しては、扶養する者が、自分と同程度の生活を保障する場合(生活保持義務)と自分の生活を犠牲にしない程度で扶養をする場合(生活扶助義務)の2種類が考えられます。一般的には配偶者同士、父母と未成年の子供との関係では前者が要求され、それ以外の者との間では後者が要求されるといわれます。

*扶養義務と贈与税
民法上の扶養義務に基づいて金品の贈与を行った場合、受贈者に対して贈与税が課されることはないのでしょうか?

相続税法においても扶養義務者の定義があります。それによると、配偶者及び民法877条(扶養義務)に規定する親族をいうと規定しています。そして、贈与税が課税されない財産として、扶養義務者相互間において生活費・教育費その他の費用を支弁するために行われる金品の贈与で、通常必要と認められるものを掲げています。

なお、贈与税が非課税とされるのは、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税が課税されます。

また、その他に租税特別措置法で次の非課税措置を設けています。
・直系尊属からの住宅取得資金の贈与で一定のもの
・直系尊属からの教育資金の一括贈与で一定の要件を満たすもの
・直系尊属からの結婚・育児資金の贈与で一定の要件を満たすもの

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2016年10月28日 金曜日

民法親族編その17…扶養①

民法親族編その17…扶養①
1、 扶養義務
 子供や老人、心身に障害のある人など、自分の力で生活することが困難な人に対しては、国家や地方自治体が行う公的扶助が存在します。しかし現状は満足のいくものではありません。
 民法は、一定の親族間にお互いに扶養する義務を定め、経済的援助を行わせることで各人が生活に困窮することのないようにしています。

2、 扶養義務のある親族の範囲
 民法は、互いに扶養の義務がある親族の範囲を次のように定めています。
① 祖父母、父母、孫といった直系の血のつながりのある者同士と兄弟姉妹
② 裁判所は、特別の事情がある場合には、伯父(叔父)、伯母(叔母)、甥、姪を限度として3親等内の血のつながった親族とその配偶者についても扶養義務を負わせることができるとしています。

 直系の血のつながりのある者とは、実の親子関係だけでなく、養親子関係も含みます。兄弟姉妹とは、父が違ったり、母が違ったりという半血の場合も含みます。また、養子同士や養子と養父母の実子という関係も兄弟姉妹に含まれます。ただし兄弟姉妹の配偶者同士は兄弟姉妹とはなりません。
 なお、婚姻関係にある者つまり配偶者同士は当然に扶養義務があります。

3、 扶養義務の順序
 扶養する義務がある者が複数いる場合は、当事者が話し合いによって決定することになります。この話し合いで決まらないときや協議ができないときは、扶養を求めるものの扶養の必要度や扶養するものの資力その他の事情を考慮して家庭裁判所が決定します。

4、 扶養を受ける権利
 扶養を受ける権利とは、権利者の一身に専属しますので他人が行使することはできません。したがって、扶養を受ける権利を放棄したり他人に譲り渡したりすることはできないこととなります。

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