2017年11月27日 月曜日
平成30年度税制改正の行方(資産税編)その4
経産省は、「中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充」・「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置の創設」を要望しています。
「中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充」は、「事業承継税制の見直し」と「中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置の創設」の二つの項目があります。
「事業承継税制の見直し」
(1)目的
中小企業経営者の高齢化が進んでおり、今後5年間で30万人以上の経営者が70歳(平均引退年齢)に達するにも関わらず、半数以上が事業承継の準備を追えていません。現状を放置すると中小企業の廃業の増加により地域経済に深刻な打撃を与える恐れがあり早急な対策が必要とされます。
(2)内容
現状を踏まえ、以下の要件等、あらゆる要件を見直すことを含め、事業承継税制を抜本的に拡充する。
①雇用要件
②納税猶予制度
③対象となる発行済議決権株式総数の上限
④対象者
(3)注目点
納税猶予ではなく、免除も含めた抜本的な見直しが要望されています。未来投資戦略の実現に向けて、事業承継の集中実施期間を設定し大胆な見直しが期待されます。
「中小企業・小規模事業者の再編・統合等に係る税負担の軽減措置の創設」
(1)目的
今後5年の間に、70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約60万社にのぼります。うち半数以上が後継者未定となっており、現状を放置すると、中小企業等の廃業により多くの雇用が失われ、GDPを押し下げる可能性があり、そのため、早期の事業承継を促していく施策が必要です。
事業承継にあたり、親族以外に事業承継(売却、M&A)し、経営資源の統合や知見を持った経営者等に事業を引き継ぐことで、サプライチェーンや地域経済の活力維持、発展に繋がっているケースも近年増加しつつあります。
また、他企業や親族外経営者等に経営を引き継ぐ場合、ファンドから出資を受けた後に事業承継を行うことも有用な手段となっています。
(2)内容
上記のような場合に生じる以下の税負担を軽減することにより、事業承継の円滑化を図る。
①株式、事業の譲渡益に係る税負担の軽減
②事業譲渡等により生じる資産の移転等に係る税負担の軽減
③一定の要件を満たすファンドからの出資を受けた際の中小企業者要件の緩和
(3)注目点
M&A等親族以外に事業を承継する場合に税負担を軽減する措置を新設する要望です。事業承継の見直しとともに未来投資戦略の一環と位置付けられています。事業承継の要件、納税猶予なのか免除なのか、制度設計全般が注目に値します。
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|2017年11月23日 木曜日
平成30年度税制改正の行方(資産税編)その3
「山林についての相続税の納税猶予制度の拡充」
(1) 目的
森林経営計画に従った森林の整備及び保護を行う意欲ある森林所有者に対して、林業経営の効率化や継続確保を税制面から支援を行い、もって森林の有する多面的機能の発揮、林産物の供給及び利用に寄与すること
(2) 内容
対象山林の範囲、林業継続の要件、一定事由の場合の利子税の軽減、経営規模拡大要件の見直し・拡充が要望されています。
(3) 注目点
林業経営も厳しさを増す中、地方の活性化、環境面から制度の拡充が望まれます。
厚労省は、「地域機能を確保するための個人開設医療機関への軽減措置の創設」
「介護医療院の創設等に伴う税制上の所要の措置」を要望しています。
「地域に必要な医療を担う医療機関の事業の継続に関する税制の創設」
(1) 目的
過疎地域等の住民に良質かつ適切な医療を安定的に提供する観点から制度の創設が要望されています。
(2) 内容
過疎地域、離島地域等において必要な医療を提供する医療機関(医療法人等)について、一定の期間の事業継続等を要件として、事業の継続に関する相続税、贈与税等に係る納税を猶予し、一定の期間事業を継続した場合には猶予税額を免除する等の措置を講じます。
(3) 注目点
過疎地域は増えており、地域医療の継続が望まれています。制度の創設に賛成です。
「介護医療院の創設等に伴う税制上の所要の措置」
(1)目的
介護保険法改正により、慢性期の医療・介護ニーズに対応するため新たな介護保険施設として、介護医療院を創設します。
(2)内容
介護療養型医療施設が平成29 年度末にその設置期限を迎えるにあたり、その受け入れ先となる介護医療院及び無料又は低額な費用で介護医療院を利用させる事業について、介護療養施設型医療施設と同様の税制上の措置の対象となるよう要望しています。
(3)注目点
介護療養型医療施設から介護医療院への円滑な転換を促すため、必要な措置と思われます。
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|2017年11月21日 火曜日
相続税財産評価Q&A70 雑種地①
相続税財産評価 雑種地①
Q86
相続税財産評価における雑種地とは、どのような土地でしょうか?
A86
1、雑種地の定義
相続税評価において雑種地とは、①宅地、②田、③畑、④山林、⑤原野、⑥牧場、⑦池沼、⑧鉱泉地以外の土地をいうこととされています。
その実態は多種多様であり、具体例として、駐車場、資材置場、ゴルフ場、遊園地、運動場、競馬場、野球場、テニスコート、ドッグラン敷地、鉄軌道用地、変電所敷地、不毛地、砂地、土取場跡等がありこのように多種多様な雑種地ですが、財産評価基本通達上は、次の区分の評価方法を定めています。
①ゴルフ場(評基通83)
②遊園地等(評基通83-2)
③文化財建造物である構築物の敷地(評基通83-3)
④鉄軌道用地(評基通84)
⑤①~④以外の雑種地(評基通82)
2、評価単位
土地の評価は原則として地目ごとに行いますが、雑種地の場合はやや注意が必要です。雑種地の場合は、「利用状況ごと」に評価単位を分けるのが原則です。例えば、資材置き場と駐車場のように雑種地どうしが隣あっていても、利用状況が異なるため評価単位は別々になります。ただし、市街化区域と非線引き都市計画区域にある場合は、利用状況が異なってもまとめて評価した方が合理的である場合はまとめて評価します。市街化調整区域にある場合は、原則通り利用状況ごとに評価単位を分けます
雑種地は、利用の単位となっている「一団の雑種地」ごとに評価します。一団の雑種地とは、同一の目的に供されている雑種地をいい、必ずしも1筆ごとではなく1筆の雑種地が2つ以上の目的に利用されている場合や、2筆以上からなる一団の雑種地も考えられます。未利用地状の雑種地はその全体が一団の雑種地となります。
また一団の雑種地は物理的に一体として利用されているか否かで判定しますので、道路や水路等で分断されている場合には、分断されているごとに別評価単位として扱います
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|2017年11月17日 金曜日
平成30年度税制改正の行方(資産税編)その2
「信託受益権の質的分割に係る所要の措置」
(1)目的
質的に分割された場合の信託受益権の課税関係を明確化することにより、信託の利用促進を図るものです。
(2)内容
受益者等課税信託について、信託の受益者が複数の場合、信託財産に属する資産及び負債の全部をそれぞれの受益者がその有する権利の内容に応じて有するものとし、当該信託財産に帰せられる収益及び費用の全部がそれぞれの受益者にその有する権利の内容に応じて帰せられるものとして課税するとされています。信託受益権が質的に分割されている場合(元本収益構造等)の課税関係について、明確化を要望しています。
(3)注目点
信託受益権が質的に分割された場合に、元本部分と収益権部分を数値で把握することは技術的に極めて困難です。課税時点で一時的に擬制し、その後信託終了時点まで絶えず見直すなど特異な課税方法ができないものでしょうか?
「相続税に係る国際的な課税のあり方の見直し」
(1)目的
相続税に係る国家間の課税権の調整を行うことで、外国高度専門人材が我が国で働きやすい環境を整備します。
(2)内容
相続税に係る国家間の課税権の調整を行うための一定の救済策を講じること。
(3)注目点
国家間の課税権の調整は必要な措置です。平成29年度より同趣旨での継続要望です。
農林水産省は、「新たな都市農業振興制度の構築に伴う税制上の措置」「山林についての相続税の納税猶予制度の拡充」を要望しています。
「新たな都市農業振興制度の構築に伴う税制上の措置」
(1)目的
意欲ある都市農業者等による生産緑地地区内の農地の有効な活用を促進することにより、都市農業の安定的な継続を目的とします。
(2)内容
新たな都市農業振興制度の構築に併せて、生産緑地を貸借した場合でも相続税の納税猶予制度が継続適用される措置を創設します。
(3)注目点
農業従事者が少なく、また、耕作面積の狭い都市農地については、必要な措置だと思います。ただし、賃借権の転貸・転売に歯止めをかける必要があると思われます。また、営農が困難になった場合の取扱いも詳細に定める必要があります。
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|2017年11月14日 火曜日
相続税財産評価Q&A69 山林⑥(特別緑地保全地区)
相続税財産評価 山林⑥(特別緑地保全地区)
Q85
特別緑地保全地区に指定された山林の相続税評価はどのようになりますか?
A85
1、特別緑地保全地区内にある山林(農地)の評価
「特別緑地保全地区」とは、都市緑地法第12 条の規定により都市計画区域内において、樹林地、草地、水辺地などの土地が、単独若しくは一体となって、又はこれらに隣接している土地と一体となって、良好な自然環境を形成している「緑地」で、無秩序な市街化の防止や、公害又は災害の防止となるもの、伝統的・文化的意義を有するもの、風致景観が優れているもの、動植物の生育地等となるもののいずれかに該当するものが、指定の対象となります。
この「特別緑地保全地区」内にある山林は、現状凍結的な利用制限により他用途への転用が制限されていますので、地区内における立木の伐採制限は、森林法上の伐採制限である禁伐に近いものと考えられます。このため、財産評価基本通達50-2 は、「特別緑地保全地区」内にある山林は、法による制限がない場合の山林の価額から、その価額に100 分の80 を乗じて計算した金額を控除して評価することとしています。ただし、林業を営むために立木の伐採が認められる山林で、かつ、純山林に該当するものは除かれます。
なお、特別緑地保全地区には農地が含まれる場合があります。この場合の農地の評価額ですが、下記のとおりです。
市街地農地・・・市街地農地価額×(1-0.8)
市街地周辺農地・・・市街地農地価額×(1-0.8)*市街地周辺農地の80%斟酌無し
中間農地及び純農地・・・農地価額*特別緑地保全地域による斟酌無し
2、その他の法規制による伐採制限がある山林(林地)の評価
森林法による保安林や自然公園法、都市緑地法のほかにも、自然環境保全法、絶滅危惧野生動植物の保存に関する法律、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律などによる伐採制限があります。
このような山林についても、法による制限がない場合の山林の価額から、その価額に一定の控除割合を乗じて計算した価額を控除した価額によって評価します。
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