民法親族編
2016年11月18日 金曜日
民法親族編その20…後見②
民法親族編その20…後見②
1、 成年後見制度
判断能力が欠けていたり、判断能力が不十分な人は、自分では正確な判断をしたつもりでも、だまされて予期せぬ損害を被ることがあります。こうしたことを避けるために、民法は判断能力に問題のある者を制限能力者として保護の対象としています。そして制限能力者に保護者をつけ、保護者の関与なしに行った法律行為は、取り消すことができることにしました。これが成年後見制度です。
平成12年4月1日から、成年後見制度が施行、戸籍に記載されていた禁治産者、準禁治産者が、被後見人、被保佐人、被補助人に変わり、登記されることになりました。ここでは成年被後見人について解説します。
2、 被後見人
「精神上の障害によって事理を弁識する能力(判断能力)を欠く状況にある者」について、一定の者からの申し立てにより家庭裁判所が後見開始の審判をして、保護者として成年後見人を選任します。この後見開始の審判を受けた者を成年被後見人と呼びます。「事理を弁識する能力を欠く状況」とは、ほぼ7歳未満の子供の能力程度と考えてください。また、強度の精神病者のような場合も含まれます。
後見開始の審判を申し立てることができる一定の者とは、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人をいいます。ほかに任意後見法により任意後見受任者、任意後見人なども申し立てることができます。なお、老人福祉法や知的障害者福祉法などの規定によって、市町村長にも申立権があたえられる場合があります。
3、 成年後見人の権限
この場合の後見人は、未成年者に後見人がつけられる場合と区別して、成年後見人と呼ばれます。成年後見人は、複数選任することができ、法人が就任することもできます。
成年後見人には後見開始の審判によって、財産に関するすべての法律行為につき「代理権」と「取消権」が与えられます。「代理権」とは被後見人に代わって法律行為を行う権限で、「取消権」とは被後見人が自分一人で行った法律行為を取り消す権限です。しかし後見人に「同意権」はありません。被後見人は判断能力に欠け、同意の意味すら理解できない状態の者ですから、後見人に同意権を与えても意味がないからです。
4、 被後見人の行為の取消
被後見人が自分で行った法律行為は取り消すことができます。後見人が代理して行為をしなければ完全に有効な行為にはならないのです。ただし、被後見人本人の自己決定権の尊重という観点から、日用品の購入のような日常生活に関する行為は本人自身で完全に有効にでき、取り消すことはできません。また、婚姻、協議上の離婚などの身分行為は本心に復していれば自分一人で有効にできます。
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