事業承継
2018年7月13日 金曜日
中小企業庁:税制改正された事業承継税制をPR!
中小企業庁は、2018年度税制改正において改正された中小企業経営者の次世代経営者への引継ぎを支援する税制措置の創設・拡充をPRしております。
事業承継の際の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制は、今後5年以内に特例承継計画を提出し、10年以内に実際に承継を行う者を対象として抜本的に拡充されました。
主な内容として、対象株式数・猶予割合の拡大、対象者の拡大、雇用要件の弾力化、新たな減免制度の創設などがあります。
改正前は、先代経営者から贈与・相続により取得した非上場株式等のうち、議決権株式総数の2/3に達する部分までの株式等が対象(贈与・相続前から後継者が既に保有していた部分は対象外)でしたが、対象株式数の上限を撤廃し、猶予割合を100%に拡大したことで、事業承継時の贈与税・相続税の負担が軽減されます。
また、改正前は事業承継後5年間平均で雇用の8割維持が求められ、雇用8割を維持できなかった場合には、猶予された贈与税・相続税の全額を納付する必要がありました。
しかし、改正後はこの雇用要件を実質的に撤廃したことで、雇用維持要件を満たせなかった場合でも納税猶予が継続可能(雇用維持ができなかった理由が経営悪化又は正当なものと認められない場合、認定支援機関の指導・助言を受ける必要あり)になります。
そして、改正前は一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみが対象でしたが、改正後は親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者への承継も対象になり、中小企業経営の実状に合わせた多様な事業承継を支援します。
最大3人までの後継者が対象となりますが、複数人で承継する場合は、議決権割合の10%以上を有し、かつ、議決権保有割合上位3位までの同族関係者に限られます。
さらに、改正前は後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価を基に贈与・相続税を納税するため、過大な税負担が生じる可能性がありましたが、改正後は売却額や廃業時の評価額を基に納税額を再計算し、事業承継時の株価を基に計算された納税額との差額を減免することから、経営環境の変化による将来の不安が軽減されております。
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|2018年5月25日 金曜日
【時事解説】後継者人材バンクを活用した事業承継支援
記事提供者:(株)日本ビジネスプラン
わが国の企業数は減少傾向にあり、とくに小規模企業の減少が顕著となっています。
小規模企業の廃業の主な要因の一つに、事業を継続させたい意向があるにもかかわらず、後継者不在を理由に廃業せざるをえない企業の存在があげられます。
中小企業庁「事業承継ガイドライン」では、小規模企業に対して創業希望者と後継者不在の小規模企業とをマッチングさせるといった「創業との連携」の重要性が指摘されています。
こうした中、国は2011年度から後継者不在に悩む中小企業に対して、第三者への承継(引継ぎ)を支援するため、各都道府県に事業引継ぎ支援センターを設置し支援を行っています。そして一部の事業引継ぎ支援センターにおいて、2014年度から後継者人材バンク事業を開始しています。後継者人材バンクとは後継者不在の小規模事業者(主として個人事業主)と創業を志す個人起業家をマッチングする事業であり、個人事業主の後継者問題の解決と創業の促進を同時に図ることを狙いとしています。
後継者人材バンクのメリットとして、起業家にとっては顧客や販売先、仕入先、店舗等の経営資源や、地域における知名度、経営ノウハウ等の無形資産を引き継ぐため起業に伴うリスクを低く抑えることができます。また、後継者不在の事業者にとっては、後継者問題を解消し事業の継続を図ることで、従業員の雇用や取引先との取引を継続することができます。
一方で、起業家にとってはゼロからの起業と比較すると相対的に経営の自由度が低くなるとともに、現経営者と経営方針のすり合わせを行う必要がある点に留意する必要があります。
では、後継者人材バンクでは具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。
そこで長野県事業引継ぎ支援センターで運営されている「長野県後継者バンク」を活用した事業承継の事例として、長野県中小企業振興センター「中小企業経営支援事例集」でも紹介されているペンションオードヴィー(所在地:長野県山ノ内町、従業員数2名)の事例をみていきましょう。
長野県後継者バンクでは、譲渡希望者の事業としてペンション等の宿泊事業者が多いこと、これらの事業の譲受希望者の中には都市部から脱サラしてくる人が多いことを受けて、長野県中小企業振興センター内に設置される創業サポートオフィスや商工会議所・商工会以外に、東京・大阪・名古屋に設置されている移住交流センターにも相談窓口を設けています。
ペンションオードヴィーは、奥志賀高原において1998年に開業して以降、安定した経営を続けてきました。しかし、後継者がいないこともあって代表者が気力・体力の衰えを感じるようになる中、引き継いでくれる人を探すために同バンクに譲渡希望者として登録するに至りました。
その後、ペンション経営を若い頃からの夢とし準備を進めてきた横浜市在住の会社員が長野県後継者バンクに譲受希望者として登録したのを契機に、事前調査を経て両者の引き合わせが行われました。譲渡希望者の経営方針・姿勢が譲受希望者と合致したことから、口頭による基本合意を経て、その後無事に事業の引継ぎに至りました。
このように後継者人材バンクによる事業承継にあたっては、譲渡・譲受希望者の双方の間で経営理念や想いが共有されることが重要となるのです。
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|2018年3月30日 金曜日
30代の事業承継で業況好転
記事提供:エヌピー通信社
東京商工会議所が中小企業を対象にした事業承継アンケートによると、事業を30代で引き継いだ経営者の過半数が、事業承継後に業況を好転させているそうです。
バブル景気崩壊後の1993年以降に事業を引き継ぎ、その後に「業況が拡大した」と回答したのは、20代、40代、50代、60代では44~47%とほぼ一定であったのに対し、30代のみ57%と突出しました。一方、「業績が悪くなった」と答えた割合では、20代が最も高く23%に上っています。
事業承継後の動きをみると、新商品・サービスの開発に取り組んだのは、30代が34%と最も高く、20代の27%を引き離しました。40代以降は年齢が上がるにつれて減少しています。
東商は「事業承継のタイミングとして、現経営者の年齢で判断するだけでなく、後継者候補が30代の時期に、経営の承継を検討すべき」と提言しています。
また、「すでに後継者を決めている」という企業と「後継者候補はいる」という企業では、事業承継の準備や対策に大きな差が出ていることも分かりました。「すでに後継者を決めている」企業は、「後継者候補はいる」企業に比べて「後継者への株式の譲渡」や「借入金・債務保証の引き継ぎ」、「自社株の評価額」などで準備・対策を行なっている割合が高くなっています。「後継者候補はいる」企業は、後継者を誰にも周知していない割合が高く、いざ事業承継を実施する時になって後継者が難色を示すなど円滑に進まないことも考えられます。自社の役員・従業員を後継者(候補)としている企業のうち、後継者を誰にも周知していない企業が、60代では3割、70歳以上では2割に上っています。
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|2018年2月9日 金曜日
会社分割の要件緩和 創業者の会社貸付金の相続対策
◆会社分割を利用して貸付金の整理
平成29年の税制改正で分割型分割の適格要件が一部緩和されました。その内容はこうです。
単独新設分割型分割にあっては、分割後の株式の保有関係は、分割後にその同一の者と分割承継法人との間にその同一の者による完全支配関係(支配関係含む)が継続することで足り、分割後のその同一の者と分割法人との間の完全支配関係の継続が不要とされました。
そこで、改正後の単独新設分割型分割を利用して創業者の会社貸付金の整理を試みてみます。
◆同族会社と同一の者
この「同一の者」は、親族が単位となりますので、同族会社の場合、親族で株式を保有している例が殆どだと思われますので、いわゆる、会社と同一の者による完全支配関係が成立します。適格要件は満たします。
例えば、甲社は、創業者60%、配偶者10%、子30%の割合で株式を保有されていたとします。この場合、甲社は、「同一の者」による完全支配の関係にあります。
◆創業者の貸付金の整理
具体的な手続きはここからです。甲社は、創業者からの借入金6千万円があり、債務超過でその返済も不能の状態にありますが、現在、事業は縮小しながらも継続して営んでいます。
ここで、甲社は分割法人となり、継続している事業を新設分割により乙社分割承継法人に承継させ、その後、甲社を解散・清算することにしますが、改正後は、同一の者と甲社分割法人との完全支配関係の継続が要件とされませんので、適格要件は満たしており、それは可能と考えます。
甲社は清算の段階で、創業者から6千万円相当額の債務免除を受け、その免除益が計上されることになりますが、既に甲社には残余財産がありませんので、原則として、期限切れ欠損金の利用により、甲社に債務免除益による課税は生じません。
結果として、創業者の会社への貸付金6千万円相当は相続財産から消えます。
但し、創業者の債務免除により当該者から他の株主への「みなし贈与課税」が生ずる余地はあるかもしれません。
なお、この改正は、平成29年10月1日以後に行われる分割から適用されます。
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